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……………
某日。
今日からいよいよ映画「ラブロマンス」の撮影開始だ。
バイク業の合間に台詞を覚え、そして撮影と、6人には一時この多忙な日々が続く。
「では、まずはニックとサリーのデパートでのデートシーンからいくよ!緊張しなくていいから、落ち着いてね」
1シーン目からデパートのシーンらしく、ビルの一部を貸し切って撮影が始まる。
きちんとメイクさんに化粧をしてもらい、髪もセットして衣装を身に着け外見は完璧。
台本を何度も読み直したし、リハーサルもなんとか乗り切った。
胸の辺りをギュッと腕で押さえると、相手役のナイジェルが緊張した様子のサラを見て軽く笑った。
「安心しろ。失敗したら俺がカバーしてやっから」
「…え…えぇ」
ぎこちない返事だが、少なからず緊張は解れる。
「よーい…アクション!」
控えの椅子から他の仲間達が見守る中、ついに映画撮影がスタートした。
始まりはナイジェルが演じているニックと、サラが演じているサリーのふたりが、並んでデパートのアクセサリー売り場を見ているデートシーン。
「あ…ほら、サリー見てみろよ。このネックレスお前に似合うんじゃねぇか?」
「いいわよ。私、宝石になんて興味ないから」
「いいから見てみろよ」
「いいって言ってるでしょ」
……………
「屈折してるキャラだなぁ、アイツ…」
カメラのフレームに入っていない他出演者。
その中のジムが腕を組んで呟いた。
ビッキーはハリー監督から貰った台本を開き、改めて人物設定を確認してみる。
「台本に書いてあるけど、サラの演技してるサリーって人は相当周りから怖がられてる人みたい。美人だけど無口で周りの人間を一切寄せ付けない雰囲気の人なんだって」
「へぇ…まぁ確かにサラと被ってる部分はあるかもな。アイツ結構クールだから」
「でもそんなサリーが唯一心を開けるのがナイジェルがやってるニックって男性。ふたりは生徒と教師という禁断の間柄でありながら、隠れてこっそり付き合ってるって設定みたいだよ!
でも、ハリー監督が最初に元恋人って言ってたから結局別れちゃうんだろうなぁ…」
……………
仲間達がそんな会話をしている事など知らず、ナイジェルとサラは順調に演技を続ける。
「だから…いらない」
ガシッ!
突然腕を掴まれ、引き寄せられたサリー。
気づくと目の前には色とりどりの綺麗な宝石がたくさん。
瞳にその宝石が映ってキラキラと輝いている。
「ったく、相変わらず素直じゃねーな」
ニックはそんな頑固な彼女を後ろからそっと抱き締めてきた。
「………ッ///」
サラの顔が一気に真っ赤になる。
抱き締められている体全体から、彼の鼓動が聞こえるみたい。
肌から温かさが伝わって
演技だとわかっていても
どうしていいのかわからなくなってしまった。
「おい…サラ…台詞…」
「…あ…え……な…何するのよ!?//」
これだけ簡単な台詞も一瞬で忘れてしまう程頭が真っ白になったサラだが、彼のひっそり囁く声に我に戻った。
腕の中の顔色を心配するが、とりあえずナイジェルはそのまま演技を続ける。
「サリー、お前にも似合うと思うんだ。ほら、特にあの指輪なんか」
「え…えぇ」
「いつか、俺が買ってやるから。ゼッテェ。そしたら…な」
「………////」
やっぱり…目が合わせられない。
これは演技。
これは演技。
貴方の言葉が私にそのまま向けられている気がして
ダメだ、ますます動揺してしまう。
「ハイ、カットーOK!うん!ふたりとも才能あるよ!」
最初のシーンはこれで終了。
ハリー監督の一声で、ようやくナイジェルの腕が自分から離れた。
それと同時に熱が蒸発し、体がひんやりと冷える。
「良かったよー、おふたりさん!お前らまるで本物の恋人同士みたいだったぜ!」
最初のシーンという事もあり、控えにいたジム達は興奮気味に彼らの元へ駆け寄った。
「そうか?まぁ、相手がコイツだったからな(笑)なぁ、サラ」
「え?ば…馬鹿、何言ってんのよ」
そんな冗談、いつも聞いてるはずじゃない。
普段なら軽くあしらえるはずなのに、今日はなんだかいつもと違って調子が狂う。
「あれ?サラ、顔赤いよ?大丈夫?最初の場面だったからね」
「えぇ…大丈夫よ。ありがと、ビッキー」
「………。」
耳に入る女性ふたりの会話。
隣に立っていた男は、不満そうに展示している宝石へ目を逸らした。
美しい輝き。
ニックが指さしていたダイヤモンドの指輪。
とても綺麗だ。
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