……………

「それじゃ、次々いくよー!」

最初の場面を撮り終えた数時間後。

一同はすぐに大学セットのスタジオへ戻り、慌ただしく次のシーンの撮影が行われる。

「次は主人公のリチャードがサリーのいるロマネスト大学に入るシーン!ふたりの出会いのシーンだね!

それじゃ、よーい…アクション!」






ボブ先生「えー…今日は君達に新しい仲間を紹介するよ☆聞いて驚くな、先生程じゃないけどとってもイケメン!で・も♪写真を撮るのは禁止さ☆あ、先生は何枚撮っても良いけどね!」

生徒「「うざ」」


ガララララ!


ボビーと全く変わらないキャラクター「ボブ先生」の紹介により、教室へ入ってきたのはリッキー演じるリチャード。

胡散臭い先生だが、彼の言う通り爽やかなオーラ漂う綺麗な顔立ちの男の子だ。

彼は壇上に上がり、黒板の前に立って生徒全員の表情を窺った。


「リチャードといいます。ロサンゼルスから来ました。よろしくお願いします!」


ぺこりと丁寧にお辞儀をするリチャード。

頭を上げた後の笑顔がなんとも爽やかで、女性生徒達がザワザワと騒ぎ始める。


女生徒A「やだ!ちょっと…格好良いっていうか、可愛くない!?」

女生徒B「言えてる!可愛いタイプだよね!超良い感じなんですけど!」

女生徒C「凄い爽やか!超可愛いんだけど!」


このルックスだ。

当然、女性達の第一印象は最高。

この時点で既に告白を決め込んでいる人もいるようだ。


「キャァァァ!!リッ……ムゴッ!」

あまりの興奮に、控えから舞台へ入り込もうとしたビッキーをジムが無理やり押さえつけた。


ボブ先生「まぁまぁ、皆の者落ち着きたまえ!僕は皆のものだよ。大丈夫!」

生徒「「………。」」

「それじゃ、席は…あ!サリーちゃんの隣が空いているね!僕の隣じゃなくて残念だろうけど、まぁ頑張ってくれたまえ」

「は…はい」


冷めている女子の態度にも全く気づかないKY教師は、リチャードをサリーの隣に座るよう指示を出した。

ヒロインの隣の席に、お相手の主人公が座るお決まりのパターン。

彼は姿勢正しく歩き、空いているサリーの隣に座った。


「よろしくお願いします。サリーさん」

「…えぇ」

笑顔で挨拶をしているリチャードに対し、肘をついて目も合わせないサリー。

明らかに初対面の人に対して取る態度ではない。

感じるのは歓迎の気持ちではなく、冷たく無関心な乾いた感情。



「リチャード君…可哀想」

「私の隣と交代すればいいのに…」


気づくと女性同士のヒソヒソ話が聞こえてくる。

突然変わった教室の空気に、彼は周りをキョロキョロと見渡した。

この冷たい態度のサリーという女性…何かあるのか?


「あ…あの…」

「………。」

リチャードから話しかけられ、瞳だけを彼の方向に向ける。

「僕が隣に来るの嫌でしたか?嫌なら遠慮せずに言ってください」

「別に」

「別にって…」

「リチャード君、気にしない方がいいよ!その人、誰に対してもそういう態度取るから!」


ひとりの気の強そうな女性が立ち上がり、声を上げ始める。


「でも…」

「そうだよ!リチャード君は何も気にする事ないよ!悪いのはその女なんだから!」

「………。」


女性達が次々と立ち上がり、リチャードのフォローをしてくれるが気持ちが良いわけではない。

むしろ、あまり良くない。

もう一度そっと彼女の顔色を窺った。

周りからこんなにも堂々と悪口を言われているサリーだが、何も聞こえていないかのように顔色一つ変えない。


「皆やめたまえ。寄って集って人を悪く言う事がどれだけ醜いか君達はわかっているのかい?」

ボブ先生に注意され、女性生徒達は渋々席に座り直す。

「でもサリー君。君も良くないよ。リチャード君はまだこの学校に慣れていないんだ。もっと優しく接してあげたまえ」

「………。」

話は聞いているようだが、特にこれと言って反応はしない。

まるで「自分は関係ない」と言っているような顔で、瞳は外の自然ばかりを見つめている。

そんな彼女に笑ってため息をつき、ボブ先生は名簿を開いた。


「じゃ…一時限目の準備にかかりたまえ」

「「はぁい」」




















「はい、カット!」


ボブ先生が教室を出たと同時に、この場面は終了。

カメラのフィルムが止まり、ハリー監督のOKのサインが出た。

その途端に緊張が解れたのか、サラは大きな息を吐いて机に伏せた。


「ふぅ…。なんだか演技とわかってても辛いわね」

「はい。本当に怒られてるみたいでちょっと怖かったです」

「何言ってるの、演技よ演技」


笑いながら胸を軽く叩かれる。

暗い表情を見ていたせいか、彼女の笑っている顔を見ると途端にホッとしてしまった。


「はは!冗談ですよ」

「リッキーも上手だったわよ。やっていけそう?」

「はい。でも…」

「でも?」

「いや…やっぱりなんでもないです」


やっぱり言えない。


「何よ、変なの」

あえて会話を止めたリッキーに、サラは机に肘を置いたまま軽く首を傾げた。


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