……………

「この間、お前の事を訊きに来た生徒がいたぞ」

「え?」


リチャードがニックの元を訪れたあの日から数日後。

サリーは授業が終わった後、美術室へ足を運んでいた。

いつものように何の意味があるのかわからない絵画を眺めていた彼女だったが、絵を描いていたニックの一言に思わず振り返った。


「誰?」

「えっと…最近入ってきた奴だ。リチャード…とか言ったか」

「………。」



彼女の頭に隣の席に座っている男の顔が思い浮かんだ。

一時何も言わずにまた絵画に目をやる。


「お前と仲良しになりたいんだとよ。変わった奴だな。友人達にお前の事を訊き回ってたら、ここへたまに来てる事を知ったらしい」

「…そう」


ガタン…

筆を置き、エプロンを外しながら立ち上がったニック。


「まぁ、アイツとお前の関係は俺がどうこう口を挟む立場じゃねーが…問題はお前がここに出入りしてる事を他の生徒に知られてるって事だ」

「…ッ」

脱いだエプロンをテーブルに置き、彼は眉間にシワを寄せながら彼女の前に立った。


「わかってんのか?この大学の生徒と教師は一切の関係を持っちゃいけねぇ。俺とお前の関係がバレたら、きっとふたりとも処罰され無理にでも引き離される」

「ご…ごめん」

「ごめんで済むような話じゃねんだよ!」

「……ッ」

肩を掴まれながら怒られると、サリーはビクンと体を震わせて珍しく小さくなった。


「…………。」

「俺さ…お前の事愛してるから。ずっと一緒にいてぇって思ってるから言ってんだよ」








……ッ…






え。何?

またこの緊張感…

胸が激しく締め付けられそう。

もう演技には大分慣れたはずなのに

ナイジェルに目を見られてこんな台詞を言われると、自分では制御が利かないくらい心臓が早く動く。



「せめてお前が卒業するまでの辛抱だ。俺だって周りに知られないよう努力してるんだから、お前もちっとは考えろよな」

「…わかった」

頷く返事を聞くと、彼はそっと肩から手を離した。


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