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……………

「サリー!」

「……っ」


呼び捨て?

今までさん付けで呼ばれている事に慣れていた彼女は、思わず隣の席に座っているリチャードの方を向いてしまった。


「…さん。」

取って付けたようなその単語。

顔が真っ赤だ。よほど緊張したのだろう。


「……っ?」

「ははっ…でもいいや。やっと振り向いてくれた」


ぽかんと数回瞬きをしているサリー。

リチャードは自分を落ち着かせる為に大きく息を吐くと、体を真っ直ぐ彼女の方へ向けて真剣に話し出した。


「先日。チアガールサークルのビクトリアから貴方の事について話を聞きました」

「え?」

「話がしたいんです!今日の昼休み…中庭へ来て頂けませんか?」


勇気を振り絞って投げかけた誘い台詞。

また相手にされず、馬鹿な奴だと思われるかもしれない。

だけど、どうしても彼女と話がしたくて。

もっと知りたいんです。貴方の事が。

彼女は何も答えず、机に頬杖をつく。

心臓をバクバクさせながら返事を待つ彼に返ってきた答えは…


「…別に」

「はい?」

「………。」

「あ、いや…その『別に』は『行く』の別にですか?それとも『行かない』の別にですか?」

「昼休み、中庭に行けば文句ないんでしょ」


それって…

「それは『行く』の別にと捉えて良いんですか?」

「行かなくてもいいの?」

「いや、違います!来てください、お願いです!」

「………。」


じっと彼の顔を見つめる。


「あの…僕の顔、何か付いてますか?」

「別に」


サリーは視線を逸らして再び外の景色を眺めだす。

とりあえず話す事を許してもらえたようだ。

一気に緊張感がどこかへ吹っ飛ぶ。

良かった。

あとは…彼女と上手く話が出来るか。

これを機会に少しでも距離が近づくと良いな。


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