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寂しそうに中庭から去っていくリチャード。
そんな彼の背中を、校舎の窓から眺めているひとりの男がいた。
「何やってんだか…」
美術教師のニックだ。
相変わらず手や洋服が絵の具で汚れていて、お馴染みのエプロンを身に着けている。
リチャードの姿が見えなくなった所でついていた肘を離し、くの字に曲げていた背中を伸ばす。
コンコン!
そこでドアを叩く音が聞こえ、彼は窓を閉めながら返事をした。
「はい…どちらっすか」
ガラララ
そこに立っていたのは、同じくこの学校の教師ボブ先生。
彼は独特の大きな瞳を向けて軽く手を上げた。
「ボブ先生…?」
「やぁ☆ニック先生!相変わらずテンションが低いねぇ!」
「放っておいてください。…で?何か用ですか?」
「おっと!そうだった!理事長が君を呼んでいたよ!早く理事長室へ行きたまえ!」
「理事長?」
眉をひそめたニック。
「そう!なんか話があるんだって!おっと、僕は食堂のおばちゃんに呼び出されてるんだった!全く…モテる男というのは辛いよ!じゃ、さらば!」
嵐のように現れ、嵐のように去って行ったボブ先生。
開けた扉も閉めていない。
「はぁ。相変わらずはどっちだっつの」
独り言を漏らしつつ、彼の頭になんとなく嫌な予感がよぎる。
突然の理事長からの呼び出し。
個人的に呼び出された事なんて、過去にほとんどないのに。
とりあえず出しっぱなしにしていた絵の具やデッサン用具を仕舞い、彼は手を洗う事もなく美術室を出た。
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