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「ちょっと…ニック!」
こちらは先程のシーンの続き。
ニックは不機嫌な顔で、近づいてくるサリーの体を腕で突き放した。
「うるせーよ!俺が別れたいって言ってんだ、とっとと出ていけよ!」
「どうしたのよ、突然!だってこの間まで私の事…」
「まだそんなくだらねぇ事言ってんのか!?俺にとってはそんなの昔の事なんだよ!」
「でも…」
語尾を小さくする彼女に追い討ちをかけ、ニックは厳しい言葉を浴びせる。
「はっきり言うぞ!?俺は今、新しい女に夢中でお前の事なんて眼中にない!残念だが俺はもうこれ以上お前と恋人ごっこをやるつもりもないからな」
「……ッ」
「今度は俺じゃなくて、もっとお前を大切にしてくれる優しい男を選ぶんだな」
「ニック…」
「わかったらガキはとっとと帰れ。もう面白半分でここに来んじゃねぇぞ」
クールな彼女の目に透明な涙が溜まる。
そんな…そんな…
彼だけは、唯一信じられる存在だと信じていたのに。
こんなに…私はまだこんなに貴方を愛してるのよ!
「早く出ていけ!」
「………」
「出てけって言ってんだろーが!!」
「…ッ…!!」
サリーは開いたままの出口を突っ切って、美術室を飛び出していった。
嫌!
もう…
やっぱり他人は信じられない!
誰も私なんか守ってくれない!!
お父さん、お母さん…
親戚のおばさんっ…周りの人、生徒、先生!
金も稼げねぇくせに飯だけ食わせてもらおうなんて!
アンタなんか私の子どもじゃないわ
迷惑なのよ!家の事情だかなんだか知らないけど勝手に居座られて!
借金まみれ!母ちゃんアバズレ!
ちょっと美人だからって調子に乗ってるよね。
性格悪いよねー、あの子の彼氏取ろうとしてるらしいよ。
あまり問題ばかり起こさないでくれる?どうせ貴方が悪いんでしょ?
誰も私なんて…
孤独。
目に映る光景全てが憎く思える。
立派な校舎も人の声も、明るい月さえも。
苦しい。
走っても走っても、どうにもならないこの苦しさ。
ひとり悔しくて目から涙が零れる。
お前ともう恋人ごっこをやるつもりもない
ついにニックまでも、私を裏切った。
彼に気を許しすぎていた自分が憎くて許せない。
やっぱり私はもう…誰も信じられな…
―僕は貴方の事を信じています!―…
頭に溢れ出す負の台詞の山の中。
ふとひとつの言葉が脳内から耳に伝わる。
今日のリチャードの台詞だ。
その瞬間に自然と足が止まった。
走り続けていたせいか酷く息が切れ、自分の呼吸の音がやけに大きく聞こえる。
嘘…
そんなの嘘よ。
私を信じてる?
笑わせないで。
もうそんな言葉、一瞬たりとも聞きたくない。
涙が頬を伝い、地面へとポタポタ落ちてゆく。
「何が…信じるよ…。馬鹿な事言わないで…」
夜空の下。
校舎の裏で独り小さく塞ぎ込んでしまった。
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