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……………

その後、生徒の通報により警察が大学へ到着。

ジェームズはその場で拘束され、リチャードもようやく恐怖から解放された。


野次馬も他の教師達によってルームに戻され少なくなっていく中、ニックの前にひとりの女性が立ち塞がった。

サリーだ。


「なんだ?」

「何なの?理事長にバレたとか、もうここの教師じゃないとか」

「………。」

「答えてよ!ニック!」


返事をせず、黙って下を向いている彼。

サリーは一歩前に出て問い詰めた。


「ねぇ!好きな人が出来たなんて嘘なんでしょ!?私との関係がバレたから…貴方がここの教師を辞めなきゃいけなくなったから、別れようなんて言ったんでしょ!?」

「………。」

「お願い、返事をし…」


「そうだ」


ポツリと零れた彼の言葉。

その瞬間に涙が右から左から溢れて流れてくる。


「ねぇ…じゃぁ…別れるなんて…」

「もう決めたんだ!頼む、これ以上…俺を迷わせないでくれ」

「ッ…。私の事は…もう愛してないの?」

「迷わせんなっつっただろ!?訊くなよ、そんな事!」


瞳孔が開き、唇が震えている。

いつもクールなニックが、こんなに感情的に話している姿は長年付き合ってきて初めて見た。


「俺は生徒に手を出したから…この大学にはもういられない。遠くの街の学校に飛ばされんだ。もう会う事はねぇ」

「………ッ…」

「お前がそれでも恋人でいたいと言ってくれても…俺はお前に酷い事を言ってあんなに傷つけたんだ。もう…お前の恋人である資格なんてない」

「嫌!そんな事言わないでよ…」

「わかってくれ。仕方ないんだ!」

「ふざけないでよ!指輪も買ってくれるって言ったでしょ!?あれも嘘だったの!?」

「………。」


何か言い返そうとして、彼は口を噤む。

いつも彼女には何でも話せていたから、余計にそれが辛くなってしまって。


「悪い」


ニックは彼女から逃げるように、その場を立ち去ってしまう。


「ニック!ねぇ、逃げないでよ!ニック!!」



徐々に小さくなる愛しい女の声。

嘘?

そんなわけねぇだろ。

俺だって…本気でお前を幸せにしてやりたいと思っていた。

いや…思っている。今でも。

だからこうするしかないんだ。

お前を愛しているからこそ…

俺はお前と別れた。

これ以上、お前を巻き込むわけにはいかない。



最初に見たあの冷たい、感情を失ったような瞳。

俺はお前の痛みを全て知っている。

お前がどれだけ辛い過去を送ってきたか。

ひとりで泣きながら生きてきたか。

だから

未来ではずっと笑って、女の幸せを掴んで欲しい。


わかってくれ。

サリー。


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