ガチャン!

「あ。ビッキー、お帰りなさい」


お給料が入って朝からショッピングモールに行くと張り切っていたのは、お買い物大好き(もはや買い物依存症レベルの)ビッキーちゃん。

しかも今日は給料とボーナスが同時に入ってすぐの土曜日の休日だ。

夜まで遊びほうけ、誰もがたくさんの紙袋を抱えて嬉しそうに帰ってくる姿を想像していた。

しかし、彼女がウィンディラン本部に帰ってきたのは午後4時。

まだまだショッピングをしていてもおかしくない時間帯だ。


「意外と早かったですね」

たまたま玄関近くにいたリッキーが出迎え、普段のように大声を出して抱きついてくるかと思っていたが…


「………。」


あれ…襲ってこない?

なんだか今日は大人しく、下を向いて全く動かない彼女。

明らかに様子がおかしい。何かあったのか?


「ビッキー?どうしたんですか?」

その様子が気になり、かがんで彼女の顔を覗き込んでみると…


「ヒック…ぐすん…」


え?泣いてる!?


「ビ、ビッキー?何かあったんですか!?」

慌てて両手で肩を掴むと、彼女はようやく目を真っ赤にしながら顔を上げた。


「リッ…リッキィ…」

「……ッ…」

「うわぁぁ!!怖かったよぉぉ!」


その瞬間全ての荷物を床に投げ出し、彼に抱きついて泣き喚く声が建物中に響き渡った。



「皆さん!ちょっと集まってください!」















「「はぁ!?ストーカーだとぉ!?」」

リッキーの声かけで全員が集まったメインルーム。

事情を聞いたジムとボビーは、揃って大声を上げて同じタイミングでソファーから立ち上がった。

真っ赤になった鼻をグズグズすすりながら、ビッキーは話を続ける。

「うん。最近…家を出る時に待ち伏せをされたり、無言電話とかもよくかかってきて。今日は買い物中に怪しい人がずっと後ろから付いてきてたの」

「クッソ、ふざけた真似しやがって!どこのどいつだ!」

「僕のビッキーちゃんに指一本触れてみろ!僕が剃刀でその身を八つ裂きにしてくれる!」

ジムとボビーが尋常ではない怒りを見せる中、ナイジェルはため息をつきながらライターの炎を咥えているタバコに近づける。


「お前のファンの仕業だな」

「おい、ナイジェル!なんでそんな冷静でいられるんだよ!ビッキーが知らない男に狙われてるかもしれないんだぞ!」

「アンタも騒ぎすぎよ、ジム。でも確かにこのまま放っとくのも危険よね。警察に相談した方がいいかも。何かあってからじゃ遅いし…」


確かにサラの言う通りだ。

取り返しのつかなくなる前にと、彼女はポケットから携帯電話を取り出したが…


「待ちたまえ!サラちゃん!」

「…ん?」


そこで高らかに声を上げたのは、いつの間に着替えたのか…迷彩柄の全身タイツを着ているボビーだ。

「今の時代、警察なんて信用なると思うのかい?ストーカーに絡む事件が起こった時、被害者は以前から警察に相談していたが、『何も起こっていない』と相手にされなかったというケースも非常に多い。

今の時代の警察は当てにはならん!

じゃぁ、信じられるものって一体なんだい?

その答えは簡単…

それは『己』だ!」

「……っ」


なんだか物凄い説得力のある話し方とそれに似合う物凄い迷彩柄に圧倒され、サラは目を丸くして固まってしまっている。

「いいかい?こんなクソみたいな世の中、信じられるのは自分だけなのだ!つまりビッキーちゃんを護れるのは、僕達だけ!僕達がビッキーちゃんの生きる全てになるのさ!」


感動的な名台詞を放った後、ボビーはビッキーの手をギュッと強く握った。

「ビッキーちゃん大丈夫!僕が命に代えても君を護ってあげるから!」

「ボビーッ…」






「リッキー!頼りにしてるわぁ!私がピンチになったら、ボビーを囮にして王子様みたいに助けてね!」

ビッキーは抱き締めてこようとした宇宙人を蹴り飛ばし、やはり最後はリッキーの元へ…

「ビッキーちゃん…命に代えてもって…そういう意味じゃないよ…」


踏み散らかされて泣いているボビーの背中を、ジムが優しくさすってあげた。


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