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……………
「皆ー!」
ジムが見事に弾丸サーブを命中させた後、後ろから聞こえてきた声。
サラの肩を支えてビッキーが男性陣の元へ駆けつけて来たのだ。
「ビッキー!」
「サラ!大丈夫ですか!?」
「大丈夫よ。ちょっとビックリしたけど、軽くぶつかっただけだし」
「良かった…」
前髪を軽くかき上げながら笑った彼女に、リッキーはホッと胸を撫で下ろす。
「さて…じゃ、拝んでやろうか。ビッキーを今まで散々しつこく追い回していたストーカーさんの顔をよぉ(極悪顔)」
ボビー「君、怖い顔になってるよ。そんな鬼畜キャラじゃないよね。大丈夫かい?」
ジムを先頭に6人が倒れている人物の元へ歩きだす。
暗くて見えなかったストーカー犯の顔が、徐々に明らかになる。
女性のすが…ッ…
「イッタァァ〜イ!もう、何すんのよ!!アンタ、マジムカつくんですけどォォォオオ!」
「………ッ!?」
起き上がり叫んだ女の顔。
その顔は全員の知っている顔であり、そして一瞬にしてサラとリッキーの表情が凍りついた。
見覚えのあるポニーテールに褐色の肌。
溢れんばかりのふくよかなバストにギャル口調。
耳に付くようなぶりっ子声。
ボビーの妹、ボビエだ。
「あ!ビエールじゃない!」
「ビキたん、おっ久〜♪」
思わぬ親友との再会に、ビッキーとボビエは思わず抱き合った。
その光景に兄や、ジム、ナイジェルも集まってくる。
「なんだ!僕の可愛い妹、ボビエじゃないか!一体何をしてるんだい!?」
「見ればわかる系でしょぉ!この地味男にこのブッサイクな人形ぶつけられたのよぉ!」
「地味男(怒)!?つかお前の兄ちゃんの人形『ブッサイクな人形』って…」
「ん?どーした、ふたりとも。そんなに離れて」
「「……いや…」」
ナイジェルが後ろを振り返ってみると、サラとリッキーの姿が大分小さくなっていた。
前回ボビエがウィンディラン本部に来て以来、必要以上に追いかけ回されてリッキーは極度のボビエ恐怖症に。
その際サラも騒動に巻き込まれ、自室に不法侵入された後、ロープでグルグル巻きにされてクローゼットに押し込まれたという過去を持っている。
その出来事をふたりとも未だに根に持っているらしく、一定の距離(いつでも逃げられる距離感)を保つ為、何十歩も後ろに下がってしまっていた。
危険生物を見る顔つきのまま、こちらに全く近づこうとしない。
「それより、お前ビッキーちゃんをずっと追い回してたらしいじゃないか。一体何をしていたんだい?」
ボビエを起き上がらせ、体についた土を払いながら兄が訊いた。
「追い回してたってそんなの人聞き悪いって感じみたいなぁ!ボビエがこんな所まで来る理由なんてひとつしかないでしょぉ!」
その言葉に首を傾ける4人。
「もう!皆恋する乙女心をわかってない系〜!ボビエの愛しの王子様・チョリッキーに会いに来たからに決まってるって感じじゃーん↑↑」
「……っ…!」
遠くにいたリッキーの背中に凄まじい寒気が走った。
顔もみるみる真っ青に…
☆補足☆
【リッキーの本名にトリッキーと入っている為、ボビエは彼の事を「チョリッキー」と呼んでいる。(彼自身は相当嫌がっている)】
「でもほら、武器とか持ってたし。それにかなり俺達を攻撃してきたよな?あれは…」
「それはこんな夜道でか弱い美少女ひとりじゃ危ないから、防犯の為にバットを持ち歩いてただけだしぃ!
そしたらボビエの許可なくチョリに近づく輩がいたんでぇ!追い返そうと思ったらスッゲェ攻撃されて超ムカついたんですけどォ!」
(チッ)
「お前!ひとりじゃ怖いからバット持ち歩くとか、お前の方が怖すぎるだろ!笑」
ジム達が爆笑している中、リッキーは隣のサラにしか聞こえない声量で舌打ちをした。
「でもチョリッキーにいきなり会いに行くのはドギマギしちゃう系だから!いやマジでパネェくらい!だから親友のビキたんに彼の話を聞こうと思ったんだけどー!
もー、超超緊張する感じじゃん!?超キンキン緊張MAXパネェ!恋バナな系も本気(マジ)すぎて、ボビエも緊張する感じで!
ビキたんに話しかけるのもパニクッちゃったとかマジウケるんですけどォォオ!」
「ん…?バナナ?」
近頃のギャル語を理解出来ずに、ナイジェルおじさんの頭上に「?」がたくさん浮かぶ。
そんな先端ギャル事情を知らないオッサンを無視し、ビッキーは彼女の背中をポンポンと叩いた。
「もぉ♪ビエールったら、乙女すぎて可愛くない!?」
「だっしょ!超ウケるよね〜!」
ナイジェル「おい。なんで『可愛くない』って言われてんのにウケるんだ?」
「リッキーの事なら何でも私に聞きなさいって言ったでしょ★
あ!そういえばこの間、リッキーのオナ中の子から彼の激きゃわたん写真貰っちゃったよ!今度見せてあげる系!」
「マジで!?いいなぁ、リッキーとオナ中とか羨ましすぎて死ねる感じぃ!」
ナイジェル「…なんかヤバい話してる上に死ぬらしいぞ。おいジム、お前止めろや」
ジム「何、勘違いしてんだよ」
・
・
・
「ちょっと。なんか向こうで話が盛り上がってるんですけど」
冷ややかな目でボビエと愉快な仲間達を眺めるリッキーとサラ。
「どうします?」
「決まってるでしょ。もーアイツとは関わりたくない系だから、今のうちに逃げましょう。みたいなー」
「マジ、ナイスアイデアすぎてスーパーウケるんですけどー。…早く行きましょ」
次の動きはすぐに決まった。
早速、ボビエ的なノリでこっそりとその場を離れ始めるふたりだが…
しかし、これも運命なのか
体をくねくねさせて照れているボビエの瞳に、丁度逃げて行くリッキーの背中が映ったのだ。
「キャァァ〜!!モノホンのチョリッキー!!
ありえないんですけどぉぉぉぉッ!
ありえないんですけどぉぉぉぉッ!!
ありえないんですけどぉぉぉぉッ!!」
「ヤッバ、見つかった!」
「リッキー!走って!」
もはや何がありえないのかさっぱりわからない。
3回も意味なく連呼すればさすがにバレるはずだ。
気づかれた事を察知したふたりは、全速力で走って逃げ出す!
「…ッ!あのケバ女!またボビエとチョリッキーの愛のロードを邪魔するつもり系!?許さねぇッ!ボビエのチョリッキーを返しなさぁーいッ!!」
ボビー「ゴフッ!!煤v
目の前の兄貴を踏み台にして、目にも止まらぬ速さで走り出し…
「「あああああああ!!!」」
あっという間にふたりに追いつき、ほとんど獣と化して飛びかかった。
ゴガシャァアアア!!!!!
ガシャン!ゴガシャン!ガシャン!!
静かな夜の街に轟音が鳴り響き、一瞬にしておっぱいお化けに飲み込まれる。
その後聞こえてきたのは、リッキーとサラの悲鳴だけだった。
「「…………。」」
サーッと顔を真っ青にするジムとナイジェル。
「なぁ、ジム。最初から思ってたんだけど…」
「ん?」
「なんでアイツあんな人間離れした動きが出来んだ?」
「そうだなぁ…。人間じゃないからじゃないか?」
頭にヒールが突き刺さったボビーを背景に、ボビエに聞こえないよう小さく会話をしていた。
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