翌朝。

カーテンの隙間から太陽の光が差し込む中、


「ん…ぐ……」

彼女はソファーの上で、ゆっくりと瞼を上げる。


「どこ……痛っ!」

頭を抑えながらようやく重い腰を上げると、見慣れない室内が目に映った。


「あ!起きた?」

彼女が起きた事に気づき、慌てて駆け寄ったのはジムとボビー。

女は寝ぼけ眼のまま、目の前に来たジムの顔をじっと見てきた。


「…大丈…っ……////?」


綺麗な長い金髪を後ろで束ねた色っぽい女性。

昨夜はだらしない寝顔しか見てなくて気づかなかったが、間近で見るとかなり美人だ。

そんな女性に見つめられ、ジムは一瞬だけドキッとしてしまった様子。


「…誰?」

「あっ…ごめん。俺はジム。君の名前は?」

「サラ…」


手を頭に乗せたまま「サラ」と名乗ったその女性。


「そっか。サラ、昨日は一体何をしてたんだ?玄関に君が倒れてて俺達ビックリしたんだぞ」

「…ん…あぁ。確か…どっか行かないといけない場所があったんだけど…」

「え?」

「忘れた…」


どうやらまだ寝ぼけているらしい。

視点も何だか定まっていないみたいだし、二日酔いのような状態なのか?


「仕方ない。体調が良くなったら俺達を呼んで。家まで送ってあげるから」

「ん…」

「じゃ、そろそろレースが始まる。行こう、ボビー」

「あぁ!」

「……ッ」


―…レース


その言葉を聞いた瞬間、サラは眉をひそめる。

なんだか怪しいこの彼女。

ジム達がいなくなった後にフラフラの足のまま立ち上がり、こっそりとメインルームを去った。









ボビー「君、コーラなんて飲むのかい!?」

ジム「悪いか?」

ボビー「コーラを飲むと歯が溶けるんだぞ!悪い事言わないからソーダを飲みたまえ!」

ジム「…ったく。ハイハイ」


ナイジェル「オメェ、ソーダなんて飲むのか?」

ジム「だから悪いのか!?」

ナイジェル「ソーダを飲むと脳みそ溶けるらしいぞ。悪い事言わねぇからコーラにしとけって」

ジム「マジでか。もう体のどこかしら溶けそうで、これから炭酸飲料飲めなくなるよ」


ジムがボタンを押して下からガランと出てきたのは、キンキンに冷えた烏龍茶。

レースが終わり、いつものように3人は廊下にある自動販売機で飲み物を買っていた。

そこでソーダのペットボトルを開けながら、ボビーがジムに訊く。


「それにしても、さっきの女の子はなんだったんだろうね」

「そうだな。なんか酒に酔って色々と忘れちゃってるみたいだし…」

「あんま深入りすんなよ。何を企んでるかわかんねぇから」

「ナイジェルは冷たいなぁ。相手は女の子だぞ?まぁ、記憶が戻ったら元々行く予定だった目的地まで俺達が連れて行ってあげればいいだけの話だし…」



「私の目的地はここよ」

「ッ…」


メインルームに戻ろうとした瞬間、後ろから声が聞こえた。

立っていたのは、噂の怪しい女性サラ。

もう酔いは覚めたのか、朝よりもしっかりした表情でこちらを見ている。


「サラ!?もう大丈夫なのか?」

「目的地はここって…どういう事だい?」

「昨日はごめんなさい。迷惑をかけてしまったみたいで…改めて自己紹介するわ。

『サラ・ヒル』18歳。

私がここに来た理由はひとつ。
貴方達の仲間に入れて欲しいの、私を」


「「………。」」


彼女の言葉に目をぱちくり開くジムとボビー。


「は?お嬢ちゃん、何を言って…」

「貴方達の走りはさっきのレースで見せてもらったわ。思っていた通りレベルがかなり高いし素晴らしかった。是非私も一緒に走らせて欲しいの」


突然の女性の入団希望。

こんな事例は未だかつて存在しなかった。

もちろんジムからの答えは…


「ダ、ダメに決まってるだろ!これは遊びじゃないんだぞ?生半可な気持ちで始めて困るのは自分…」

「ちょっと待って。良い物を見せてあげる」


ジムの言葉を押し切り、彼女は何かを取り出そうと用意したバッグの中を探り始めた。


「…ッ…」

彼女が次々と取り出した物に、ジムとボビーは目を奪われる。


アメリカ各地で行われているモトクロスレース大会のメダル、表彰状…

そして彼女の姿が写っている全米ベストライダー受賞式の写真。

紛れもない本物だ。


「サラ。君は一体…」

「そういえば聞いた事あるよ!フロリダ地方で男性顔負けの走りをする女性バイクレーサーがいるって!まさか、それが君なのかい!?」

「…ふふ。そうかもね」


一時の間が開いた後、ジムとボビーは無意識に同じ行動を取った。

驚きの拍手だ。


「す…すげぇ!そんな人がウチに入りたいなんて、大歓迎だよ!」

「僕となかなかいい勝負になりそうだね!いいだろう、入団を許可してやる!」

「本当?ありがとう」


周りを取り囲んだふたりにニコリと笑ったサラ。

バイクの経験がある上、かなりの実力の持ち主とわかったなら性別なんて関係ない。

どうやら問題なく仲間に入る事が出来そうだ。


「早速社長に訊いてみるよ!あの人の事だ。きっと舞い上がってOKしてくれると思…」



「ダメだ」



「……ッ?」


男性の声。

その言葉は明らかにナイジェルの方向から聞こえた。

「え?」とした表情と共に、一瞬で場が重く静まり返る。


「ナイ…ジェル?」

「突然やってきて、人ん家で爆睡かまして…挙げ句の果てに仲間に入れてくれだの。そんな怪しい女を入れるわけねーだろ」


彼はいつものだるそうな声ではない。

どうやら真面目に話をしているようだ。


「突然こんな事をお願いして申し訳ないと思ってるわ。でも私は怪しい人物なんかじゃないし、こうやって実力だって証明…」

「未成年で酒飲んだのに真っ当な人間だって言えんのか?」

「そ…それは…」


痛い所を突かれ、だらんとサラの頬に汗マークが出る。


「とにかく。社長がOKを出しても俺が許さねぇ。わかったらガキはとっとと帰れ」

「……ッ…」


ナイジェルは冷たい言葉を彼女にぶつけ、そのままひとりでメインルームに戻っていった。



*****

ビッキー「ちょ…ナイジェルがサラに対して厳しいわよ!?どういう事!?」

ジム「実はコイツ、最初はサラに全く興味なかったんだ。興味ない所か追い出そうとまでしててな」

リッキー「この展開からナイジェルはどうしてサラを気に入ったんですか?」

ボビー「それもまた面白いんだよ!まぁ、続きをご覧なさい!」


ナイジェル「なんか…恥ずかしいな」

サラ「そうね…」


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