続く長い廊下で、青年と距離を広げて付いて歩く6人。

彼の背中を追いながら、ナイジェルが小声で隣のリッキーに話しかけた。


「随分と偉そうなガキだな。誰なんだ、コイツ?」

「知らないんですか、ナイジェル?
日本から来たバンドグループ『weather life(ウェザーライフ)』のボーカル、美空 七音(ミソラ ナオト)君ですよ。

18歳ながら人気バンドのボーカルを務めてますが、他にも有名歌手の作詞作曲、楽器の演奏も手がける絶対音感を持った、大人顔負けの天才音楽家ですよ。昨日Mステにも出てました」


芸能人事情に詳しくない中年おじさんに丁寧に説明する中、その前ではまた別のヒソヒソ話が行われていた。


「ねぇ…なんかテレビと雰囲気違くない?」

「俺も思った。サラ、どういう事だよ?」

「アンタ達が勝手に来たんでしょ?私は止めたのに」


確かにビッキーの言う通り、雰囲気がテレビに出ている時より少し違う気がする。

いや、テレビでもあまり話している姿は見た事ないのだが…

こういう姿は、正直初めて見た。


「ここだよ。僕達の楽屋」

そうこうしている間に、彼らの楽屋に着いたらしい。

目の前の扉には「weather life様」と貼り紙がある。



「ただいまー」

「おかえり、七音。…ん?どちら様?」


美空が扉を開けると、手前で若い男性がテーブルを拭いていた。


「雨宮君だぁ!雨宮君だよ!」

「凄い!本物ですね!」

後ろのリッキーとビッキーは既に大興奮。

肩につきそうな程の青碧色の髪、眼鏡をかけた美空と同年齢位の青年だ。

どうやら彼もweather lifeのバンドメンバーらしい。


「お!なんか美空さんが友達連れて来てるっすよ!」

「へぇ、珍しい〜」


続けて残りのメンバーと思われる男性が3人、美空の傍へ集まってきた。

ひとりはオレンジ色の髪に褐色の肌が特徴のアクティブ系な青年。
前髪をピンで留めたオデコがなんだか可愛らしい。

ひとりは白髪の物腰柔らかい女性のような顔つきの青年。
マフラーを巻いており、ウサギ柄の刺繍がされている。

最後のひとりが灰色のパーマがかった髪をしたヨーロッパ系の青年。
背が高くて鼻も高い…いかにも「外人」という風貌だ。

やはり全員芸能人だからか、オーラが一般人と違う。

メンバー全員の姿を見た例のふたりは、かつてない程の感動で瞳を輝かせている。


「あぁ…僕の知り合いと…その知り合い。みたいな人達」

「あ!ウィンディランじゃないっすか!?スッゲー、本物だ!」

「え?何、ヒーちゃんこの人達知ってるの?」

「知ってる?って、スポーツ界では有名な人達っすよ!」

ヒーちゃんと呼ばれる青年は、ウィンディランの事を知っていたらしい。

「ふ〜ん」とあまり興味なさそうな美空は、次に6人の方へくるりと向きを変えた。


「知ってるかもしんないけど、皆にも紹介してあげるよ。

えっと…このデコっぱち日焼けがギターの日晴 響介(ヒバリ キョウスケ)。

眼鏡がベースの雨宮 律(アマミヤ リツ)。

白髪マフラーがピアノ、キーボードの雪之原 奏(ユキノハラ カナデ)。

あとこの外人が、ドラムをしてる留学生のクラウディ・メロディアス。
皆、weather lifeのバンドメンバーだよ」


「ちょ…白髪マフラーって何ぃ?もっと良い表現あるでしょぉ?」

「そうだ!そうだ!デコっぱち日焼けって何っすか!」

「まぁまぁ。お客さんの前だぞ、皆」


美空の説明にブーブー文句を言う日晴と雪之原。

それを沈めたのはベース担当の雨宮だ。

どうやら彼がチームの仲間をまとめている、しっかり者の立ち位置らしい。


「騒がしくてすみません。今、コーヒーでも入れますのでどうぞお座りください」

ジム「アイツ…良い息子だ。同じ空気を感じる」


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