……………

ついにウィンディランメンバーのweather life一週間マネージャー生活がスタート。

指定された日に先日訪れた音楽事務所へ向かうと、玄関で美空を除いた楽器担当の4人が並んでいた。

美空は遅刻しているのか、事務所にはまだ姿を見せていない。



「本当に申し訳ございません」

彼らは昨日、突然その話を聞かされたらしい。

先頭に立っていた雨宮は申し訳なさそうに深々とジム達に頭を下げた。


「専属マネージャーが一週間不在という事は僕達も知っていたのですが…七音から別のマネージャーと話をつけていると聞かされていたので安心しきっていて。まさかこのような事態になってしまっていたとは」


気の毒な程何度も頭を下げる彼に、ジムは思わず声をかけた。

「いや、いいんですよ!俺達もやるからには全力でやろうって決めた事ですし!」

「しかし…」

「元気出してください。迷惑をかける事になるのは多分こちらの方だと思いますし。
それに俺達だってこんな経験滅多に出来ないんですから、ちょっと楽しみにしてるんですよ」

リッキーが優しく言葉を投げかけ、後ろのビッキーやナイジェルも笑ってくれている。

そんな表情にweather lifeの4人も多少安心したらしく軽く微笑んだ。

「ありがとうございます。そう言って頂けるととても助かります。こちらこそご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」

代表して雨宮が再び頭を下げた。


玄関から部屋の中に案内され、連れて来られたのは先日美空に呼び出された所と同じ部屋。

テーブルの椅子に並んで座り、とりあえず前回同様温かいコーヒーが出された。


話題は早速本題へ…

まずはナイジェルが口を開いた。

「…で、マネージャーっつっても具体的に何をやればいいか教えてくれねぇかな?俺達、ほとんど何も聞かされてなくて」

「あ…はい。基本的にはスケジュール調整や車等の移動の手配。
それからテレビ番組のスタッフとの打ち合わせ。今週はざっとこんな感じでしょうか。
その他お手伝いして頂きたい事があればお願いしたいのですが」

「ふーん!なんか本格的!」


興奮気味のビッキーをよそに、ジムは再び話に戻る。

「あ…そういえば君達、学生だよね?学校に行ってる間は何をしてればいいの?」

「平日に行動して頂くのは授業が終わった夕方からとなります」

「なんだ、夜だけなんだ!じゃぁ、普段の仕事より全然楽じゃん」

「はい。夜まで何もなければ…ですけど」

「…?」


一瞬雨宮の表情が曇った所で…


ガチャン!

「チーッス」


ようやく当の問題児が事務所へやってきた。

遅刻に反省している様子もなく、軽いノリで鞄を机に置いた美空七音。



「美空さん、遅刻っすよ」

「道が混んでたの」

「嘘をつくな。僕と同じマンションだろ」


雨宮のキツい言葉に、美空は子どものようにプイッとそっぽを向く。

見た目は高校生でも中身は小学生だ。

すると彼の目線の先にジム達6人の姿が映る。


「あっ!皆、やっぱり来てくれたんだ!」

「お前が無理やり呼んだんだろ」

「いいじゃん、別に。一週間よろしくね、マネージャーさん!」

「…はぁ」

悪気があるのかないのか。

歯を見せて笑った美空に、全員が虚しいため息をついた。


「あ、もうこんな時間だぁ。そろそろ行かなきゃ学校に遅刻しちゃうよぉ」


雪之原の言葉で全員が壁にかかっている時計の針に目をやる。


「そうだな。ジムさん達、ちょっと待っていてください」

何かを思い出した雨宮は、ロッカーの中に入れておいた紙の束を持ち上げた。

普通のホッチキスでは留まり切れないので、大きめのクリップで挟んである。


「何これ?」

「一応簡単にマニュアルを作りました。昨晩慌てて作ったので、大した物ではありませんが…」


「簡単」とは言うものの、ひとりひとりの束は何時間かけて作ったのかと疑う程厚い。

これを俺達の為に夜な夜な作ったのか。


「君…本当に真面目なんだな(涙)」

「え?」

再び彼の誠実さに感動を覚えたジムが目頭を抑える。


「えっと…では今日は僕達の学校が終わるまで、これを読んでおいてもらっていいですか?」

「わかった!ちゃんと読むよ!」

「ありがとう、雨宮君!」


全員はお礼を言いながら、それぞれのマニュアルを受け取った。

「では行ってきます。マニュアルの最後のページに僕達の携帯番号を記載しているので、何かあれば連絡ください」

「はーい」

「いってらっしゃい」


若干の不安は残るが、今は彼らに任せるしかない。

雨宮は4人を連れて自身が通う学校へ向かった。














「あー…眠い」

マニュアルを読み始めて1時間。

静かな時間が部屋に流れる中、ナイジェルの口から大きなあくびがまたひとつ。

元々文字を読んだり物事を考える事が苦手な奴だ。

今までも多分読んでいるフリをしていただけなんだろうが。


「ナイジェル、オジサン臭い〜」

「るっせーな、臭いは余計だ。大体こーいうのは頭で覚えるより体で覚えた方が早いんだよ」

ビッキーが伏せているおじさんの頭にプスプスとシャーペンの芯を刺して遊んでいる。

「ナイジェルの事はほっとけ。どうせ起きてたって真面目に読まないんだから」


言っているそばからジムもなんだか目が疲れてきたのか、何度も目薬をさしている。

普段のだらしない仲間達の姿を見ながらサラが呟いた。


「まぁ…マニュアルを読んで先のスケジュールを立てるだけなら、どれだけ良かったか」

「どういう事ですか?」

「私達はマネージャーでもあり、七音のお世話係なのよ?リッキー、この意味わかる?」

「え?」

「出来の悪い子の親ってね…」


ピロロロ!!


タイミングを計ったように、部屋に響いた携帯の着信音。


「あ、電話だ」


ジムがポケットに手を突っ込んだ途端、リッキーにはサラの顔が突然歪んだ事がハッキリとわかった。


「はい、もしもし?雨宮君?どうしたの?

…うん。

…うん。

……はぁ!?」


会話の途中で立ち上がった彼に、全員は思わず同時に顔を上げた。


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