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……………

「はい、良いですよ。ホルンの方!そこはもう少しゆっくり、空気に溶け込むように滑らかに」


未だ美空の姿が見えていない館内では、雨宮の指揮するオーケストラのレッスンが続いていた。

最初の時と比べてかなりまとまりが出てきた。

音のバランス、リズムの取り方。

どれも良い調子だ。


「はい、ストップ!OKです!」

指揮棒を止めた彼の一言で、鳴っていた楽器全ての音が止まった。


「皆さん上達が早いですね。この調子なら美空もきっと驚きますよ。『これじゃ、もう僕が教える事はないじゃないか!』…ってね」


雨宮のアメリカンジョークに、アメリカンなオーバーリアクションで笑う奏者達。

最初は張り詰めていた空気も温厚な雨宮のおかげで和み、全員の心もひとつになりかけていた。


「それじゃ、最後にもう一度通してやってみましょう。それから休憩です。構えてください」


指揮棒が上がると、再び楽器は音を鳴らす体勢に入る。

全体を見回し、演奏が出来る事を確認した雨宮が指揮棒を振ろうとした


その瞬間…









「違う。全っ然違う」



「ッ…」


入り口から低い男性の声が聞こえ、奏者、指揮者共に振り返った。

立っている美空七音の姿だ。


「七音。お前、遅…」

「音の大きさもバラバラ。リズムもそれぞれが色んな方向を向いていて、全く調和が取れていない」


雨宮の言葉を聞かず、険しい表情のままこちらへ歩いてくる。


「トランペット。クレッシェンドがなっていない。強くする部分は背筋を伸ばしてもっと肺から息を吐け」

「ティンパニ、全体的に急ぎすぎ。もっと感覚をあけて」

「ピアノ、24番ファの音が抜けていたぞ。しっかりしろ」


楽譜も見ていないのに、歩きながら次々に注意をしてゆく美空。


「指揮者。第7楽章14番のリズムが若干遅い。もう一度プロのCDを聴き直してこい」


最後に指揮者の雨宮にもダメ出しを行い、指揮棒を左手で奪い取った。


「七音…」

「もう一回、最初からやり直し。手ぇ抜いた奴は即帰ってもらうから」


制服のネクタイを一度だけ整えた後に指揮棒を構えると、奏者も慌てて手持ちの楽器を構える。


その光景を入り口で見ていたマネージャー6人。

演奏が始まると、ジムがぽつりと呟いた。


「凄ぇ。これが…あのチャランポランか?」


普段のだらしない不良姿とはまるで違う。

いいように利用され、なんでこんなガキの為にと全員が思っていたが…

どうやら「大人顔負けの天才音楽家」という異名に偽りはないようだ。


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