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ライブスタートまで残り1分。
真っ暗の会場内、幕の裏側で美空がマイクスタンドをギュッと握り締めた。
ジム達もステージ横から祈るような思いで見つめている。
この幕の向こうに…美空の両親がいる。
ベースの雨宮がコクリと頷き…
「雨の日のように湿った世の中…
時には灰色の厚い雲がかかり
冷たい雪を降らせる事もあるけど
それでも僕達は人の心に晴れ空を届けたい
美しい空を
七色の音と共に…」
透き通るような美空の声。
マイクから伝わり、広い会場全員の耳にその声が入ってきた。
「―さぁ!!
全員の熱気で
厚い雲を吹き飛ばそうぜぇぇぇッ!!!」
ド――――ンッ!!
観客と歌手を隔てる幕が落ちて、
ステージ下から火花が噴水のごとく勢いよく噴き出した!
「「キャァァァァァァ!!!!」」
weather lifeの姿が見えた途端、観客の熱は一気に急上昇。
波のように次々立ち上がり、叫び声で周りの音が一切聞こえなくなる程だ。
「す…すげーな」
「だから言ったでしょ、ナイジェル?weather lifeは今最も勢いがあるバンドグループなんだって!
私も最初、七音君はスッゴく憧れの存在だったけど…今はちょっと印象変わったかな?」
マイクを握って歌っている美空の姿を見て、ビッキーはクスクスと笑った。
「でも七音のお父さんとお母さんはまだ来てないみたい」
「…?」
サラの言葉にボビーが首を傾げる。
「さっき観客のリストを見たけど、両親の番号にまだチェックは付いてなかったわ」
「七音君はその事を知っているのかい?」
「どうだろう。リハーサルはギリギリまでやってたし、多分見てないんじゃないかしら」
歌いながら豆粒みたいに小さな観客の顔をひとりずつ見てゆく。
…違う。
…違う。
…違う。
…違う。
自らの両親と観客の顔を照らし合わせる。
星の数程の人数。
無謀だと誰もが思うだろうが、
それでも確認をせずにはいられなかった。
お袋。
親父…
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