23
「おーい、どうしたー?早く歌えよー!」
「他メンバーはどうしたのー?早く出してぇ!」
ついには大きな声でステージに問いかけてくる観客達。
僕は相変わらずマイクの前でひとり立っているだけ。
どうすればいいの?
怖い…
怖い。怖い。
やっぱり僕には無理だ。
「美空くーん?」
「早くー!待ちくたびれた!」
「ユキはー?ユキを早く出してぇー」
うるさい…
皆うるさい…
無理だって…!
僕なんてどーせこの程度の人間なんだよ!
帰りたきゃ帰ればいいだろ!
もう我慢の限界だ…!!
ギュッとマイクを握って
それを床に叩きつけようと…
「うるさ…」
シャ――――ッ!!!!!!!!
「………ッ!」
その瞬間、突然ステージ周りから豪快な火花が噴射。
何事かと周りをキョロキョロ見回した美空と観客全員。
「お待たせしました――ッ!スペシャルゲストの登場だぁっ!」
「……っ!?」
この声は…
ド―――――ンッ!!!!!!
「…………ッ!!」
立ち尽くしている美空の前…
いくつかの床セットが開いて
背景の爆発と共に、今までマネージャーを務めていた6人が勢いよくジャンプして登場してきた。
「え!?」
美空は驚いて目をパチクリさせる。
イメージカラーの衣装を身にまとっている6人は、立ち尽くしている彼を笑顔で振り返った。
「ちょっ…何何何!?」
「あの人達…ウィンディランじゃない!?ウッソ!?え、マジ凄い、本物だよ!?」
「キャァァ!リッキー君!?リッキー君がいる!!」
この世界じゃそこそこ顔が知られている6人。
テレビでしか見た事のない彼らの突然の登場に、会場中が波のようにどよめき始めた。
「ちょっ…皆どうして?」
「あぁ、細かい事は今はいいから。それ、日晴君が持ってたギター?」
訳がわからないままコクリと頷くと、ジムさんが「よいしょ」とそのギターを担いだ。
「え、何するつもり!?ジムさん達、まさか…」
「そのまさか、ですよ。まだ覚えたてで上手く弾けるかわからないんですけど」
ニコッと笑って、次はリッキー君がミヤ君のエレキベースを手に取る。
「リッキー、お前と一緒にするなよ。俺、こう見えても高校生の頃バンド組んでたんだから」
「俺だって去年の忘年会でエアギターやらされたんですよ。大丈夫ですって」
「いや、全然大丈夫じゃ…」
ジムさんとリッキー君の真ん中から口を挟もうとするが、当のふたりは音の調整と言葉のぶつけ合いに夢中で人の話を全く聞こうとしない。
「どういう事?聞いてないよ、僕!」
「そりゃコッチの台詞よー!ま!でも私、小学生の頃将来の夢に『アイドル歌手になりたい』って書いてたから半分夢は叶ったかなぁ!」
「え?」と振り返ると、ユキがいつも使ってるキーボードの前にビッキーちゃんが立っている。
「面倒くせーけど、せっかく特訓したんなら大人数の前で弾いた方が盛り上がんだろ」
その隣にディの代わりのナイジェルさんが、ドラムにスタンバイしていて…
「七音」
「…っ…」
目の前にはマイクを持ったサラさん。
「サラさん…これは一体…」
「ごめん、ビックリさせて。本当はこのステージが終わってからやるつもりだったんだけど」
「終わってから?」
「皆でね、頑張ってる七音の為に歌をプレゼントしようと企画してたの。まさかこんな形で披露する事になるとは思わなかったけどね」
「………ッ…」
「貴方はひとりじゃない。
だから…一緒に歌おう?」
- 224 -
*PREV NEXT#
ページ: