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「レディース ア――ンドジェントルメェェン!今日はイケメンの僕のステージに集まってくれて…ありがとう!」


そこで口元にマイクをセットしたボビーが両手を広げて前に出た。

目が眩むようなキラキラの全身タイツを見せつけ、マイクの位置を調節しながら観客に向かって大きな声を投げかける。


「今宵、このステージに集まった君達は非常にラッキーだ!

weather life アーンドッ 我らウィンディランの夢のコラボレーション!

心ゆくまで楽しんでいってくれたまえ!」



「「キャァァァァァァァ!!!!」」


この時ばかりはボビーのキモい台詞も観客に大ウケだ。

すっかり座ってしまっていた客も立ち上がり始める。


「OK!OK!それじゃ、野郎共!最後まで付いてこいよぉ!」


「「イエェェェェェ!」」


歓声と共にボビーは床に膝をつき…


「それじゃ、いくぞ!

映画
ラブ・イズ・キャンパスライフ主題歌!

『Love Romance!!!!!』」



ピュンッ!!


「「キャァァァァァァァァ!!」」


某アイドル顔負けのワイヤーアクション。

ボビーは台詞と共に天井近くまで飛び上がった!

イントロが流れ出し、ナイジェルのドラムで曲が始まる。


「皆…」


心臓の奥から込み上げてくる。

今まで感じた事のない、言葉では言い表せない熱い気持ち。


サラさんに手を握られ、徐々に自信が体に戻ってくる。


不器用ながら楽器の音が聴こえる。



ウチのバンドメンバーに比べれば、それはそれはまだまだの腕だけど

それぞれが僕の為に練習をしてくれた。


何とかしてくれようと、体を張ってくれる。



傍にいてくれる。




それがどれだけ…今の僕の力になるか…





「ラブ…」






「……ッ…」







「Love Romance!!

行くぜぇぇぇぇぇッ!!!!」






耳が痛くなる程大きな声で叫んでやった。


「「キャァァァア!!!」」



待っていた、観客からの歓声。


僕は…




「七音…」

「僕…歌うよ。だから一緒に歌って」

「うん」



サラさんとお互い手を強く握り合った。

もう片方の手にマイクを握って。



『恋なんて、もうしないと思っていた。

君が僕の前からいなくなって

視界は真っ暗

前に進めなくて

それでも生きていけると信じていた』



無事に綺麗な声で歌い出した美空。


隣で同じ歌を歌ってくれる人が…


僕の声の土台を作ってくれる人がいる。




全部の音が重なり、奏で合い、ひとつになってゆく。


今までたくさんの曲を聴いてきたけど、こんなに素晴らしい曲を聴くのは初めて。


今までたくさんの歌を歌ってきたけど、こんなに楽しい歌を歌うのは初めてだ。




『それでも独りじゃないと君は教えてくれた。

何度も何度も

転ぶ度に手を差し伸べてくれる


僕は独りじゃない』



歌詞が自分の姿と重なって

また声が詰まりそうになったけど

必死に歌い続ける。



『だからそう、立ち上がって…』



曲がサビに入ろうとした、その瞬間…


美空の口が止まってしまった。


サラがふと彼の視線の先を見ると…






「…………。」




観客席の一番奥。



扉の前に


ミヤ君、ヒーちゃん、ユキ、ディ…


そして、自分の母親と


くちゃくちゃ顔で笑っている父親が立っていた。




「親父ッ…」





アメリカに行くと無理を言って毎日ケンカしてた日々。


勝手にこっちに来て、鬱病にかかったと聞かされた日。


母親が泣いて電話をしてきた日。


そして、ふたりが来れないかもしれないと聞いて絶望した瞬間…


全てがまるで映画のワンシーンのように脳裏に蘇り


再び堪えていた涙がボロボロと溢れ出した。





「なおとッ――――!!!」





騒がしい観客の声で全く聞こえないけれど、父親は確かにそう言っている。


笑顔で手を振って…


ったく…人がどれだけ心配したと思ってるんだ…


鼻水をズルズルすすって、僕は再び歌い出した。


両親に恥ずかしい姿を見せないように一生懸命。










僕はこれだけの仲間に支えられて、こんなにも大きな声で歌える。


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