8 〜第3章〜王家の過去


第3章
〜王家の過去〜


「やぁ、皆お疲れさま!」

食事と入浴が終了した所で、全員はボビー専用の個室に入った。

個室と言ってもさすがは皇子の部屋。

ひとり分とは思えない十分な広さがあり、この部屋も下は絨毯に上はシャンデリア。

大きな両開きの窓の向こうにはバルコニーも存在し、星空を見る事が出来る。

淡いオレンジの部屋の光が癒し効果をもたらす。

休むスペースとしてはもったいない豪華さだ。


「わぁ!ベッドふかふか〜っ!」

「キャッホー!」

皇子様専用のふかふかベッドに、ジムとビッキーが豪快にダイブ。

飛び込んでもぽよんと跳ね返る弾力だ。


「隣のフワフ惑星から特注で取り寄せた高級ベッドさ。
あ、あとでメイドにお紅茶を持ってきてもらうように言ってあるから、ナイジェル君達もゆっくり休みたまえ」

「スゲーな。皇子ってそんな稼げる仕事なのか?」

「皇子って職業なんですか?」


ナイジェルとリッキーが同じベッドに座り、サラは近くにあったソファーへ腰かけた。


「ナイジェルに『皇子』なんて無理無理!皇子っていうのはリッキーみたいに華があるイケメンじゃないと絵にならないし!」

「そうだな!ナイジェルなんてせいぜい『国務省担当兼政治資金管理大臣』くらいだな!」

「『国務省担当兼政治資金管理大臣』全然せいぜいのレベルじゃないですよ。俺もなりたいです」


同じベッドに潜ってケラケラ笑っているジムとビッキー。

無意識だろうが、教育上あまり良くない光景だな。


「ところで、ボビーはどうしてこんな大きな星の皇子だったのに地球に来たの?」

話を聞いていないサラが、紅茶を優雅に啜るボビーに話しかけた。


「あぁ…そうだね。君達にも話しておこうか」

彼が急にしんみりとしたイケメン顔で遠くの星を見つめ大きく息を吐くと、

その緊張感にさっきまで騒いでいた馬鹿共の口も止まり、全員が耳をすました。




「実は僕達は風の種族なんだ」





「…は?」


突然ファンタスティックな話を始める皇子に、マヌケな声がちらほら。

「ボビー…どっかで頭でも打ったのか?」

「君に心配される程僕は馬鹿ではない。口を挟まないでくれたまえ」

「…すいません」

怒られるジムは若干イラッとしたものの素直に謝る。

相変わらずジムだけは、彼に格下だと思われているらしい。

ボビーは構わずに話を続けた。


「風の種族。それは風の分子から生まれた…いわゆる風の妖精」

サラ「見た目はほとんど土の種族よね」


「そして僕達風の種族と一緒にもうひとつ種族が生まれたんだ。それが水の種族だよ」

「水の種族?」

「そうさ。僕達風の種族と水の種族は約一億年前から対立関係にあるんだ。あ、水の種族王の写真があるよ。見るかい?」

高級椅子から身を乗り出し、彼が棚から取り出した一枚の写真が…



これだ。



「「つかコイツも土の種族じゃね!?」」


写真をパンツの中に戻したボビーは、何事もなかったように再びシリアスモードへ突入。


「僕達は昔から星を巡っては戦いを続けていた。
隙を見せた途端にお互いの星を襲撃し…戦い…僕達風の種族も奴ら水の種族も、何度も星を去らざるを得なくなってしまったものだ」

言っている事はまるで映画の中の世界だが、その真剣な口調に周りの顔もつられて真剣になっている。

「その戦いはどうやったら終わるんですか?」

ベッドに座っているリッキーが口を開いた。


「お互い、王を人質に取られているのだよ。それを機にこの戦争は始まった。王を取り戻すまで争いは続くのさ」

ビッキー「え?でもアンタのお父さんが風の王なんでしょ?さっきいたじゃん?」

「あれは風の王ではない。水の王さ」

「は?どういう事?」


確かに先程までボビーの父親「風の王」とテーブルを囲んで食事を楽しんでいた。

ボビーそっくりの赤い瞳、褐色の肌、そして白い髪の毛。

どれもそっくりでふたりが親子である事を誰も疑うはずがないのに。

ボビーの言っている意味がさっぱりわから…


「この間ゲートボール大会に出た時、すっ転んでお互いの頭を打ち合ってしまったのだ。だからあれは見た目は風の王だが中身は水の王だ」

ジム「王クラスまでいってもそんな事で入れ替わるのか!?お前ら一族どんだけ精神抜けやすいんだ!」

ナイジェル「待て…お前、それが原因で対立が始まったって言ったよな?お前の親父、軽く一億歳は越えてね!?」


男ふたりの突っ込みを綺麗にスルーし、ボビーは再び窓の向こうを(シリアスイケメンモードで)見つめた。

「今はこの星に少しだけ落ち着いてるが、水の種族はまたいつ攻め込んでくるかわからない。
攻め込んで来られたら、我々はまたこの星を去らなければならない。だから僕は地球へ来たんだ」

「どういう事ですか?」

「我々風の種族でも生きられる環境か、そして惑星に生息している『人間』というものがどのようなものかを確認しにさ。
幸運ながら人間の寿命もせいぜい何十年か…力や体力も我々より遥かに低い。最高の場所だったって事がわかったのさ」

サラ「待って、なんかこの人怖い事言ってる。次に水の種族が来たら、確実に人間を滅ぼして地球に住もうとしてるわよ」


「まぁ、それもまた何千年後の話になるさ。さて、寝よう。知らない土地に来て君達も疲れたであろう」

サラの言葉も鮮やかにスルーし、ボビーはカーテンを閉めた。

壁にかかっている時計の針は既にЖБДфを指している。
(この惑星の単位でよくわからない。周りが暗くなってきて夜という事は確かだ)


「怖いな。まさか地球がこんな形で危険に晒されているとは思ってもなかった」

「まぁ、何千年後の話と言ってますし。その辺の地球の平和は未来の人達に任せましょう」



長い話を終えて就寝時間。

ジムとリッキーとナイジェルが少し大きめのベッドで一緒に、サラとビッキーが小さめのベッドで一緒に。

ボビーがビッキーの隣に…寝ようとしたが蹴り飛ばされ、床で…


それぞれ眠りについた。











ドォォォォォォンッッ!!!


「うわっ!」

「キャァッ!な、何!?」


眠りに入って数分後、とてつもなく大きな爆音と地震が発生。

その衝撃で全員が目を開けた。


「なっ…何だ!?」

「サラァッ!」

ベッドから振り落とされたナイジェルが辺りを見回し、怖がっているビッキーがサラに泣きついた。


「まさか…!」

ボビーが窓まで走り、カーテンを勢いよく開くと


辺り一面が炎に包まれていた!


「水の種族が攻め込んできたんだ!」

ジム「お前、何千年後っつっただろ!まだ7分しか経ってないぞ!怒」


「クッ!」

ボビーはパンツの中からトランシーバーを取り出し、即座にどこかへ連絡を取り始めた。


「奴らが攻め込んできた!

第ζ部隊は正面門へ!
第π部隊は裏口門へ!
第Ψ部隊は宮廷を囲め!!

エクストラヴァージン砲を準備しろ!
奴らをひとりたりとも中に入れるな!

僕も今すぐ向かう!」


トランシーバーを握ったまま、ボビーは(格好良く)走って部屋を飛び出す!

状況が理解出来ない地球人には何がなんだかさっぱりわからず、ただただその場で座り込んでいた。


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