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……………
「あー、よしよし。怖かっただろ?」
ジムはリッキーを救出後、慌ててタオルと着替えを脱衣所から持ってきた。
体を拭いてやってもリッキーの顔は憔悴しきっていて、服も着せてやって髪も乾かしてやって解かしてあげて…
それでもジムが部屋に戻ろうとすると「行かないで」と袖を掴んで離さない。
ようやく彼が自室に戻り始めたのは事故から1時間後。
「疲れたから寝ます」と頭を下げ、ふらついた状態で立ち上がった。
白眼で生気が感じられない彼は、ブツブツと知らない国の言葉を話しながら部屋へ戻って行く。
かなりダメージは大きいらしい。ボビエパワー恐るべしだ、とジムも体を震わせた。
・
・
・
もう…なんなんだ今日は。
自分の気が休まる時間が1秒もない。
ご飯もまともに食べられずお風呂にも入れず。
驚きと恐怖で疲れ切っただけだ。足取りも重い。
ようやく部屋の前まで辿り着くと、リッキーはだるそうにドアノブに手をかけた。
「………。」
その時だ。
彼の脳裏にボビエの顔がよぎる。
(いや、アイツはそんじょそこらの人間とは訳が違う!
間違いない…奴は俺の部屋でもきっと待ち伏せして、また襲う隙を窺っているはずだ)
そう予知した彼は、恐る恐るノブから手を離す。
ゆっくりとドアに耳を押し当てて中の様子を確認してみた。
ボビエ「まだかしら、チョリー!もうハンパなく待ちくたびれちゃった感じ系!」
ビッキー「気安くチョリなんて呼ばないでくれる!?大体チョリって何?」
ボビエ「チョリッキーって事よぉ!可愛くない!?可愛くなくなくない!?」
ビッキー「何それ、マジで超可愛くなーい!!?」
…やはりいた。
予想はしていたが、ゾッと身震いがする。
「もう!いつまで経っても来ないから、迎えに行きましょ!恋人同士一緒に寝るのは当たり前じゃなーい?」
「何ですって?リッキーと寝るのはこの私よ!」
(来る!?奴が俺を迎えに来る!?と…とにかく逃げないと!あんな奴と寝るくらいなら、ひとりで庭に寝た方がまだマシだ!)
リッキーは慌てて隠れられそうな場所を探すが、ここはだだっ広い廊下。
あるのは予備の電話と壁にかかってある「今週の目標」くらいだ。
身を隠せるような場所はない。
カツン…
カツン…
厚底サンダル独特の足音がだんだんと近づいてくる。
「ヤバイ、見つかる!仕方ない、もうここしか…!」
彼は一か八か、自分の部屋の隣の部屋のノブを回した。
ガチャン!
幸運な事に鍵はかかっておらず、すぐに中に入って身を隠す事に成功。
「キャァ!チョリどこぉ?」
その後すぐにボビエとビッキーが廊下を忙しなく走っていく音がドア越しに聞こえた。
ドタドタッ!
「ちょっと押さないでよ!」
「押してるのはアンタでしょぉ!!」
・
・
・
よし。もう足音と大声は聞こえない。
「はぁ…はぁ…」
知らない間に激しく息が切れていた。
なんなんだ…
なんで何も悪い事していないのに、警察に終われる犯罪者みたいな気分なんだ。
リッキーはとりあえず逃げ切れた事にホッとして扉から耳を離した。
「そういえば、ここ誰の部屋だっけ?」
リッキーが隠れた部屋は真っ暗で何も見えない。
確か俺の部屋は廊下を進んだ最も奥で、隣の部屋と言ったら…
パチン!
思い出す前に急に灯りがつき、住人の姿が目に入った。
「あ、すいません。ちょっと人に追われてるもので…」
暗闇に目が慣れてしまったせいか、急に明るくなると視界が真っ白に染まってハッキリと顔が見えない。
リッキーは目をごしごし擦りながら、前に誰がいるのかを確認する。
「あの、ですから一時ここに……あっ」
姿を確認出来た。
出来たは良かったものの…状況は最悪だ。
「リッキーどうしたの?勝手に入ってきて」
着替えの途中だったらしい。
上半身が下着姿のサラが目の前にいた。
「サッ…サラ!?///誤解です!俺はそんなつもりじゃ…」
しまった…隣は女性の部屋だった。
彼女はニヤリと笑い、指をゴキゴキ鳴らし始め…
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