……………

「あー。大丈夫か、お前」

「知るか!消えろ!皆消えてしまえばいいんだ!」

サラのアッパーカットをまともに受けたジムは、吹っ飛ばされた挙句に隣町の住宅地に落ちたらしい。

一般市民の昼食中テーブルのど真ん中に突っ込み、その状態のまま警察へ連行。

帰ってきた際も何故かテーブルに突き刺さっていた。

そして今、ナイジェルの適当な手当てを受けながらも彼に泣きついている。


「つか、お前よく生きてたな。確実に星になったと思ったわ」

「俺も思ったわ。あぁ俺死んだ…って。目の前が真っ白になって、そして…」

「それよりチュリッキャはどこに行ったんですか?」

「ジムの話を全部すっ飛ばしやがったぞ、コイツ。あんな勢いで飛んでいったら、途中で手を離してどっかに落ちただろ」


隣に立っているリッキーは、あの気持ち悪いぬいぐるみの事しか頭にないらしい。

慣れていない手つきで包帯を巻き、とりあえずの応急手当は終了した。


「これで終わりだ。さっさと離れろ」

「嫌だ。もうちょっとこのままでいて。お前の心臓の音落ち着く」

「彼女か、お前は!気色悪いから早く退け!」

「ジム!チュリッキャは!?チュリッキャをどこに落としたんですか!?」



「うわ!オッサン同士で何やってんの、キモ!」

そこでメインルームにやってきたのはiPodで音楽を聴いていたビッキーだ。

目に映ったジムがナイジェルに抱きついている光景に、わかりやすいドン引きポーズをとっている。


「あ、ビッキー!俺のチュリッキャ知りませんか?」

ナイジェル「知るわけねーだろ」

「え?チュリッキャって今流行ってる猫のぬいぐるみ!?あれ超可愛いよね!リッキーも好きなんだぁ!」

ジム「確実に『猫のぬいぐるみ』じゃないと思う」


ビッキーは耳にさしているイヤホンを抜き、大好きなリッキーの元へ駆け寄っていく。

何も話していないのに知っているなんて…

あんな気持ち悪いぬいぐるみが若者の間で流行っているという事が事実とわかり、
オッサンふたりは自分達がおかしいのか若者がおかしいのか、よくわからなくなってきた。


「それよりチュリッキャがどうしたの?なくしちゃったの?」

「あぁ、説明すると長くなるんですが。サラが実は…」


リッキーがある程度今までに起こった出来事を彼女に説明した。

「あはははっ!何それ、猫耳オッサンの幽霊!?いるわけないじゃん、そんなの!」


内容は猫耳のオッサンの幽霊。

チュリッキャの瞳が透ける。

目を合わせたら気絶。

そしてアッパーカット。

予想通り、彼女は独特の甲高い声でお腹を抱えて笑い出す。

まぁ、初めて聞いた人間は普通笑うだろうな…


「仕方ないだろ。サラが怖いって聞かないんだから」

「まぁね。でも、なんだかんだ言ってトニーもちょっとは怖いと思ってたんじゃないの?」

「ジムだ。ふざけるな、俺は怖くて泣いてたんじゃなくて、殴られて泣いてただけだ」

リッキー「どっちにしても非常に情けないですよ」


彼の突っ込みにゴホンゴホンと軽く2回咳払いをして、ジムはビッキーの顔を見た。


「とにかく!モザイクのかかっていないチュリッキャの幽霊だ!要するにちっちゃい猫耳オッサンだな。
お前も見かけたらすぐに俺達に情報を頼むぞ。早く解決しないと、またいつサラに殴られるかわからないからな」


「わかったよ!」と彼女は屈託のない笑顔を見せる。

多分、この顔は信じてないんだろうな。

全員がそう思った。


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