……………

即座に針に餌をつけ、竿を振り上げた一番のやる気者は、お洒落なオレンジ色のサンバイザーを被ったビッキーだ。


「よぉーし!リッキーの為にとびっきりの大物を釣り上げてやるんだから!」

「オルラァッ!」と巻き舌で女子らしからぬ声を上げた彼女は、防波堤から竿を大きく振り下ろした。



ザッパ―――――ンッ!!!



「あれ…?」

力強く振り下ろしたのは良かったものの、針が落ちると予想された位置が不自然に波飛沫を起こした。

まるで岩か何かを落としたような激しい振動。

おかしいな。そんなに重い重りを付けてたっけ?

そういえば、勢いをつけるために後ろ側に竿を振った瞬間からなんとなく重かったような…

恐る恐る後ろを振り返ってみると…


先程まで後ろに突っ立っていたジムの姿がない。



「あああああ!!!ジョニータァっ!ごめぇんっ!」


どうやら後ろに竿を振った瞬間に、針がジムの服に引っかかり、彼ごと海へ投げ飛ばしてしまったらしい(良い子は真似してはいけません)

ようやく事態に気がついたビッキーが、海へ叫び慌てふためく。


「どうしよっ…どうし………あ…」


目に入ったのは仕掛けにマイルアー(ボビー人形)を装着しているボビーの姿だ。


「ボビー!アンタの全身タイツ、防水加工してる!?」

「ん?なんだい、愛しの我が姫。僕の姿がそんなに気になるのかい?」

「見ればスキューバダイバーみたいな格好をしてるわね…よし」





「お願いーッ!!!!」

釣竿を振ろうとしたサラの目の前に、突然緑色の物体が投げ込まれた。


「ビッキーちゃっ…ごぼぼっ…!黒人は走るのは得意でも…泳ぎは苦てっ…ぶくぶくぶく…」

綺麗に深海に沈んでゆく緑色の半魚人。


「ビッキー、生き餌を使うなんて本格的ね」

何事もなかったように再び釣竿を強く握る彼女。

「さてと。今日の晩ご飯は…

鯖の煮付け、鯵の開き、鯛の刺身、鱚の天ぷら、鰯のつみれ汁、鱸の塩焼き、たこ焼き、イカ墨パスタ、鯨ベーコン…」

ブツブツブツと取り憑かれたように謎のお経を唱え始める。

ギッと目つきを変えた、その瞬間…




サザッ…


「…ん?」

何かの気配を感じる。

ふと足元に目をやると…


黒い胴体、二本の長い触覚、そしてあの目にも止まらぬ素早い動き。



ザザザザザザザザッ!!!

気がつくとその仲間が何十匹も

塀の向こうから群をなしてこちらへ流れ込んできた!



ザッパ―――ンッ!!!



「エエエエエエエッ!?」

彼女の行動に、隣にいたリッキーが思わず立ち上がる。


「うるせーな、どうした?」

「ナイジェル!サラが…!サラがフナムシにビビって海に飛び込みました!」

「なんだって!?待ってろ、サラ!俺が救い出してや…」


ナイジェルが防波堤から海へ飛び込もうとした瞬間、信じられない光景が広がった。

サメ、クジラ、イルカ、魚達のオンパレード。

もはや海に飛び込むスペースはない。


「リッキー、テメェどんだけ撒き餌撒いてんだぁッ!怒」


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