……………

数分して着替えが完了。

グレーのパーカーを羽織り、膝辺りまで丈のある青の水着を穿いた姿のジムがプールサイドまでやってきた。

仕事柄ある程度の筋肉は付いているものの元々痩せ気味な体質の為、これぞスポーツマンという体つきと言うにはもの足りない彼。

ビッキーの姿はまだなく、暇なので周りの人々をなんとなく観察していた。

やはり家族や恋人連れが多いな。


「プルートォッ!!」

聞こえてきたキンキン声。

聞いた事もない知らない名前。

間違いない、ビッキーだ。


「ジムだ」

「ねぇ、見て見て!この水着!フリフリが可愛いでしょ!?」

やっぱり喜怒哀楽が激しい単純女。

先程ジムと言い合いをしていた事なんてすっかり忘れて、「可愛い水着を着た」というだけでテンションがすっかり上がっている。


「……っ…」

ジムは見せつけられたその水着をポーッと見た。


白をベースに赤の水玉が並んだフリルの多いビキニ。

大きめのバストの為、谷間も出来ている。←

所々にリボンが散りばめられていて、なんとも女の子らしい水着だ。

確かに可愛い。

めちゃくちゃ可愛い。

だが…


(なぁなぁ…)


周りにいる、いかにもナンパ目当ての男達がこちらを見て話をしている。

これは非常に危険だ。


「ビッキー、プールに入るぞ」

「え!?ちゃんと見た!?何すんのよ!」

ジムは細い腕を引っ張って、危険な狼達から彼女を遠ざける事にした。










ザブン!

大きなプールに浸かったふたり。

大人用なので足が届かない程の深い水位のプールだが、端の方にはきちんと板が敷いてあり、胸元くらいまで水が来た所で足が床についた。

そんな俺達の姿を見て、ナンパ男達は諦めたのか向こう側へと歩いていく。

とりあえず、これで一安心だな。


「きゃぁっ!プールなのに温かいよ!不思議不思議!ね、ジョセフ!」

「ジムだ。そうだな、温水プールだもんな。当たり前だろ」

何も知らずに無邪気に遊んでいるビッキーを見て、ジムはホッと胸を撫で下ろした。


「ねぇ、どっちが早く泳げるか競争しようよ!」

「いいぞ。負けた方が昼飯奢りな」


それから1時間程、ふたりは去年の夏以来のプールを堪能。

たまにまたビッキーを見てヒソヒソ話している男達もいたが、そこは俺がアイツらの顔をガン見していたらどこかへ消えてしまった。


「あははッ!ジョニー、泳ぐの遅い〜」

「うるさい」


彼女は終始笑っていて、とても気分がいい。

ガッ!

「痛ッ!」

色々な事を考えて立ち尽くしていると、子どもが投げたボールが顔面に直撃するなんてアクシデントも起こった。

そんな光景もケラケラ笑って見ていて、終いには彼女も子どもと一緒に俺へ向かってボールを投げつける始末。

楽しそうに笑っている彼女の顔。

大袈裟かもしれないが、本当に時間の流れが止まって欲しいと感じた。



「じゃぁ、次はホーガンの番だよ!」

「ジムだ!いくぞー…」



「ねぇ、お姉さん!可愛いね、一緒にウォータースライダーに行かない?」

「え?」


突然見知らぬ男性ふたりに話しかけられ、ビッキーは振り返った。

夏が似合う褐色の肌の銀髪と黒髪のイケメン男子組だ。

どちらもサーフィンでもやっているかのような、体が締まった筋肉質。

ジムの体つきよりも遥かに男らしい体型。


「本当に!?いいよいいよ!」

もちろんこんな絶好のチャンスに面食いのビッキーが食いつかないはずがない。

1秒も待たずに首を縦に振った。


「ジョニーいいよね!?」

「あぁ…(チッ)行ってこい」


突然の邪魔が入り、顔には出さなかったがジムの脳裏にあまり良くない感情が芽生える。

「じゃ、また後でねぇ★」と手を振ってきたので、とりあえず振り返してやった。


「あれ彼氏?」

「違うよ!なんというか…お兄ちゃんみたいな」


悪かったな、どーせ俺はお兄ちゃんだよ。

ブスッと不機嫌な顔をして泳ぎだしたジムに、再び子どもが投げたボールが後頭部を直撃した。


- 295 -

*PREV  NEXT#


ページ: