6
……………
彼女は自分の力で起き上がれる状態まで回復したが、もう激しく運動をするわけにもいかず、ジムとふたり並んでプールサイドのベンチに腰掛けていた。
あちらはすっかり先程の楽しい温水プールに戻っている。
そんな光景をただ眺めていた。
「さっきは…ありがとう」
「っ…?」
横から聞き慣れない言葉が聞こえて、ジムは首を回した。
命の危機に晒され、ビッキーも珍しく大人しい顔をしている。
膝の上に置いている拳に力を込めて、もう一度口を開いた。
「水に沈んだ時ねっ…もうダメだ。私はここで死ぬんだって思った。
多分…アンタの言う事聞かなかったからバチが当たったんだって…。
本当は全部わかってたのに。
ジムが私の為を思って言ってくれていた事なのに、やっぱり私素直になれなくて…」
「ビッキー…」
「真っ暗の何もない場所にひとり放り出されて…
凄く怖かった。
怖くて、悲しくて、苦しくて仕方なくて、
何回もねっ…アンタの名前を叫んだの」
「…………。」
ジムは涙目になっているビッキーの横顔から目が離せなかった。
「そしたらね…少しだけだけど…聞こえたの。
まるでこの世の終わりみたいに大袈裟に叫ぶ…私の名前を呼ぶジムの声が」
笑ったが、涙は目の端から溢れ出して頬へと流れ落ちていた。
「アンタとケンカしたまんまで…お別れしたくないって思ったから…
暗闇の中から出口を探して走り回った…気がする。
気づいたら目の前にいてくれて凄く安心した。助けに来てくれなかったら、私もうここにいなかったかもしれないから…感謝してるよ」
涙を指で拭った彼女は顔を上げた。
鼻も目も真っ赤だ。
一時見つめ合うと、目と鼻だけではなく顔全体が真っ赤になる。
「もう!帰ろう!愛しのリッキーも風邪ひいて心配だし!」
「あ…あぁ」
ジムもつられて立ち上がると、持っていたパーカーを強引に奪われた。
「おい、何するんだ?」
「マイクが着ろって言ったんでしょ!?」
ビッキーは頬を赤く染めたまま、奪ったパーカーを羽織って歩きだした。
「はは…ジムだ(怒)」
素直じゃない奴だな。
だが、ようやく一安心だ。
これで少しは男好きな性格が治ると嬉しいのだが。
まぁ…無理かな。
ジムも軽く口元を緩ませ、早歩きで去っていくビッキーの背中を追い始め…
「あ、君可愛いね!どう?俺達あとでバーベキューやるんだけど一緒に来る?」
「………ッ///!行く行くッ★私、バーベキューだーいすき♪」
どこかのハリウッド男優に似たイケメンからのお誘い。
コイツの病気がそう簡単に完治するわけがなかったんだ。
はぁ…
世の中のイケメン、全員絶滅しろ。
またまた子どもの投げたボールが頭を直撃し、ジムはプールの中へ転落した。
fin
- 299 -
*PREV NEXT#
ページ: