「ゲホッゲホッ」

「へっぐしょん!」

「ぐすっ…ずずっ」


部屋の中に響くくしゃみや鼻水をすする音。

ナイジェル、サラ、リッキーはメインルームに仲良く並んで布団を敷き、グッタリと力なく横になっていた。



「…パナがつまって苦ちーでつ」

リッキーが変な言葉で、隣に置いてあるティッシュ箱に手を伸ばす。

「無理…きつい…だるい、死ぬ」

サラは文章になっていない単語だけを呟いて、枕に顔を深く埋めて動かない。

よく見るといつも結っている長い髪を解いていて、普段とは少し違った印象だ。

「……………。」

ナイジェルに至っては羽毛布団が暑苦しいらしく、大きく毛布からはみ出して頬を床につけて横たわっている。


カレンダーの今日の日付には「プール」とビッキーの書いたであろうギャル文字が残されているが、この3人は今朝からこのダーク状態に陥っていた。

原因は恐らく昨晩行ったスーパーだ。

結局目当ての品物は手に入らなかったし、人ごみで体力も奪われた上に、こんな風邪までひいてしまった。

…行かなきゃ良かった。



「やぁ!皆、風邪をひいたらしいね。大丈夫かい?」

そこで手を振りながら扉を開けて入ってきたのは、病気とは無縁のボビーだ。

彼も本日プールをキャンセルして、本部に留守番をしていた。


「見ての通りよ…ゴホッ…」

「ダメだ。俺先に天国行くわ。宣言しとく。雲の上で待ってるから…」


3人ともかなり弱った様子で返事にも力が入っていない。

「全く。凡人はひ弱な体の作りなんだなぁ」

「風邪くらい誰だってひくだろーが…ずずっ!ってか、マスクしてねーとお前にも移るぞ?」

「大丈夫だよ。僕、コロナが心配でワクチン5550回打ったけど何ともなかったから」

「打ちすぎだろ…逆になんでそんなに打たせてもらえたんだ」


ナイジェルにはこれ以上言い合いをする力が残っておらず、クタッと再び床におでこをつけた。

そこでかみ続けて真っ赤になった鼻をこすりながらリッキーが顔を上げる。


「ボビー…昨日隕てきが激突ちて治療に3日かかるって聞きまちたよ。ずるっ…ぐしゅぐしゅ…大丈夫でつか?…というか、なんで生きてるんでつか?」

「ああ、3日かかるのは僕のビッグマグナムだけだよ。それ以外は全て1時間程で再生するのさ」

「そうなの…おめでとう…」


ボビーのセクハラ発言に対しても女性のサラは動じない。

いや、むしろ今は構ってやる余裕がないのだと思う。


「よーし、可愛いビッキーちゃんがいなくて凄く凄く凄く寂しいが…まぁ、セコム(※ジムの事)が付いてるから心配はないね!今日は僕が責任を持って君達の看病をしよう!ありがたく思いたまえ★」


「「…えっ…」」

自慢の胸板を強く叩いたやる気満々のボビー。

この男からの手厚い看病。


ぶっちゃけ、嫌な予感しかしない。


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