……………

あの事件から今日で4日が経過した。


「おっとー!本日もリッキー選手は6着です!前回も前々回も最下位でしたが…珍しいですねぇ」


レースが終了し、スタンドにアナウンサーの声がマイクを通して響く。

あのリッキーが3度も立て続けに最下位。

今までなかった事態に観客もざわついている。


「リッキー…」

レースで連続最下位になる事もだが、あの日以来リッキーはいつものように笑わなくなった。

常に深刻に考えている表情をしているし、飲み物をこぼしたり躓いたり、危なげな行動が目立つ。

今日もレース前なのにスペアのバイクキーを忘れてあたふたしていた。

そんな彼が心配で、5人は無意識に姿を目で追う日々が続いていた。


「………っ…」

観客席にいたミランダと目が合って、彼女はニタリと笑いリッキーは視線を逸らす。

彼女の隣には、冷たい顔をしたバレルの姿が。

この数日。レースが開催される度に奴らは一番良い席を取り、そこから走る6人の姿を嫌らしく観察し続けていた。

まさに高みの見物だ。


「チッ。胸くそ悪ぃ」

ナイジェルはリッキーの背中を手で支え、彼らが視界に入らぬよう向きを変えさせる。

そんな自分達の姿を見て、ミランダは厚い唇をベタベタと触りながらにやついた。

全く気分が悪い。


「リッキー、元気出して!私達が貴方を絶対辞めさせたりなんかさせないんだから!」

「ビッキー…」

前で力強く拳を握る彼女。

この元気いっぱいの明るさが、今の自分のどうしようもない暗い心をなんとか支えてくれる。


ありが………









「弱い奴は辞めちまえ!」







「……っ…!」



背後から確かにその言葉が聞こえ、思わず背けていたのに首を回してしまった。



「弱いんなら辞めろよ!俺達はガキのかけっこを観に来たわけじゃねーんだ!」


ミランダの隣にいた中年の男だった。

その声が大勢の観客の耳に入り、注目を集める。

クッソ…あのアマ、こんな嫌がらせまで!


「ウッセェ!それ以上言うとぶん殴っぞ!煤v


その男の言葉にカチンときたのか、ナイジェルが腹の底から叫んでその男に言い返す。


「ちょっ…ナイジェル、ダメよ!落ち着いて!」

「テメーら、こんなきたねぇ真似して恥ずかしくねーのか!?降りてこい!!」

「ナイジェル!」


サラが止めても興奮している彼には聞こえない。




「弱い奴に弱いと言って何が悪い!?金ふんだくっといてとんだ茶番を見せやがって!!」


「お客様!困ります!」

「落ち着いてください!」


罵声を浴びせた客の男はその場で警備員に取り押さえられた。

観客席に気分の悪いムードが立ち込め、ざわざわと話し声があちらこちらから聞こえる。


「二度とこんなアマ野郎をレースに出すな!見てて気分が悪いんだよ!観客全員そう思ってんだからな!!」

「お客様!こちらへ来てください!」


スタンドの外へ連れて行かれるまで、男はリッキーを批判する言葉を叫び続けた。

隣にいたミランダは片手を口元に置いてクスクスと笑い、バレルは無表情のまま何処吹く風。

異例の事態が発生し、本日のレースは負のムードが漂う中後味悪く幕を閉じた。


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