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……………

ブォォォォォッ!

キーッ!!


レースの激しさを物語る、耳を突き抜け直接鼓膜に響くエンジン音。

スタートして既に2分半が経過していた。


『さて、ファイナルラップを目前に控えた時点でバレルさんが体一つ分のリードを奪っています!』


アナウンスの言う通り、レース後半でバレルとジムの間に差がついていた。

さすがリッキーと互角に…いや、彼を越えた相手だ。

ジムはその体一つ分の差をずっと埋められずにいた。


「ジム君…!」


レース展開に仲間達の表情も徐々に曇り始める。

リッキーの為に自ら勝負を申し込む事を決めたジム。

メンバーは黙ってコースを走るバイクを目で追い続けた。


フン、所詮はこの程度か…

貴様のような雑魚が俺に勝つはずがない。

俺が、どれだけやってきたと思う。

実力と走ってきた距離の格差だ。


俺に勝負を挑んだ事を後悔するんだな



そして



「さぁ、ファイナルラップに入りました。このままバレル選手は逃げ切れる…」


ブオオオオオッ!!


「…ッ!?」


「……っ!」


今までとは全く違うスピード音にバレルは思わず首を振った。



「おっーーーっと!!!ここでジム選手が怒涛の追い上げだ!」


舞う煙の量が違う。


今までの一般的な走りとはまるで違う、

猛スピードで突然追い上げてくる…!


「チッ…!!!」


バレルも咄嗟にスピードを上げるが、2人の差はグイグイと縮まっていく。


コイツッ…!




………………………


「はぁ?バレルにマッチレースを挑む?」

「あぁ」

それは今朝の出来事。

置き手紙を握ったジムからの提案に、ナイジェルは言葉を返した。

「本気かよ?あのリッキーでも負けたんだぞ」

「大丈夫だ」


彼は頷き、言葉を続けた。


「バレルは確かに強い。目を見ればわかる。アイツは自分の走りに絶対の自信を持っている。

アイツが得意としているのはジャンプだ。
ジャンプの手前の加速、跳び方のバランス、最速でスピードを落さず着地する技術。
あの技は一級品だ。この中の誰にも真似できない」

「……。」

「ただアイツの走りを見ていた限り、コーナリングの甘さやブレーキの使い方など、見劣りする部分も多々あった。
何よりアイツの弱点は、終盤だ」

「終盤?」

ビッキーのセリフにもう一度頷く。

「あぁ。リッキーとの走りを見ていた限りだが、最終ラップの走りで若干だが操作が雑になりスピードも落ちていた。そこをジャンプでカバーして一気に逆転したって所か。
リッキーも体力的に前半型の同じタイプだし、そこで差がついてしまったんだろう。
つまりアイツは終盤スピードに乗れない可能性が高い」

「ラスト一周で一気に抜く作戦か。お前だって体力お化けでもないし、そう上手くいくか?」

「まぁな。だが、さっきも言っただろ?アイツは自分の走りに絶対に自信を持っている。
俺なんか格下くらいにしか思っていないはずだ。必ずどこかで油断が出るはずだ」

「でも…」


「勝負は一瞬だ」


「……っ…?」


その言葉に全員がジムの顔を見た。

そして、再び彼は口を開く


………………………


後半の怒涛の追い上げに仲間たちもごくりと息をのむ。

「アイツ…本当にっ…」

「……っ」

「大丈夫よ。」

心配そうに見つめるビッキーの肩にサラが手を置く。

「ちゃんと、見てなさい」


・・・





グイグイ迫ってくる男の恐怖。

アクセルを全開にしてもまだ迫ってくる

急カーブでもスピードを出しすぎて、上手く曲がりきれねぇ


クッソ、


何なんだっ…コイツはっ…!


ふと前に目をやると、得意のジャンプ台。


以前リッキーを一気に抜き去った場所だ。


イケる。


ここでまた一気に差をつけるっ…




バレルは一気にアクセルを踏み込み


そしてジャンプ…!


あの「天才」と呼ばれるリッキーを抜いた技術。

どの技術でもアイツを追い抜けないと言われ続けた俺が、アマチュア時代唯一アイツよりも得意とした技。

ただ認められたくて、何度も何度も積み重ねてきた。


こんな雑魚にっ…





「……ッ!!!」




ふと気が付くと、男はま隣にいた。




っ…



何故だ…?


何故お前が、俺と同じスピードで走って‥‥?




そして絶望した状態で下のメーターを見ると



点滅をしている。




これは…

・・・・・・・・・・・・・・


「勝負は一瞬だ」


「‥‥っ?」


そう言ってジムはレース会場の地図を持ってきた。



「今日のコースは以前リッキーが負けたコースと同じだ。

俺の考えが上手くいけばラスト一周、猛スピードで奴を追いかける事ができる。
距離を縮められれば、アイツだって多少はビビるだろう。

そして、ココだ」



彼が指さしたのは、ひとつのジャンプゾーン。



「ここはバレルがリッキーを追い抜いた場所だ。

バレルは自分の走り、特にジャンプに絶対の自信を持っている。
リッキーを追い抜いたこのジャンプゾーン、この場所で格下と思っていたに追い抜かれた途端、アイツはどうなると思う?」


・・・・・・・・・・・・・







ブオオオオオッ!!!!!!!!!





バレルのバイクがオーバーヒートを起こしている間に、ジムは一気にその場から追い抜いた…!!!



「「ワアアアアアアアアアアア!!!!!!!」」


まさかのレース展開に観客から大歓声が上がる。





嘘だろッ…俺がこんな初歩的なミスを…っ!!

クッソ…!



「「アイツは完全に鼻をへし折られる」」




メーターが回復し、即座に反撃にかかるようにアクセルを全開に切り替える



それでも追いつけない青の背中。



クッソ、



俺がこんな奴に負けるはずがねぇ‥!!



「「そうなればこっちのもの。確実に動揺し、ミスを連発するはずだ」」



ギギギッ!!


ガンッ!!


最初の走りとはまるで違い、カーブも大回り、何度もレールにぶつかるっ…


それでもアクセル全開のまま、青の背中を追い続けるが



それでも今はファイナルラップ…!!


俺が…!



俺がこんな奴に…!!!!





「「でも本当にラストで追い抜けるの?リッキーでも負けた相手だよ」」


「「大丈夫だ」」


「「はぁ?どうして?」」


「「どうしてって…決まってるだろ?」」




ゴーーーーーーーーーーーーーーーールッ!!!!!!!!




「スゲェ!!!あいつ、本当にやりやがった!!」

「きゃぁぁ!!!!アレックスー!!!!!!!」

「ジムよ、ジム!!!凄いわ、本当に!!」

「さすがはジム君!それでこそ僕の永遠の僕(しもべ)だぁっ!」


仲間達が我も忘れる程、大きな声で叫んだ。

あのサラやナイジェルまでそんな声で叫んでいて…

そんな彼らの姿も一瞬テレビに映し出されていた。


『凄い!凄いぞ、ジム・リバース!ファイナルラップでバレルさんを見事追い抜いたぁっ!
まさに逆転サヨナラホームラン!大逆転の勝利です!!』


アナウンスも観客も、驚きの逆転劇にテンションがマックスに。

そしてリッキーは、ただ呆然と立ち尽くし

その目から一筋の涙が流れ







「「俺はこのチームのリーダーだからな!」」




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