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……………

ジムとのレースに敗北したバレルは、行く宛もなく街を徘徊していた。

人を寄せつけない鋭い目。

漂う猟奇的なオーラ。

街を歩く人間は自分を見て、怖がって避けて歩いている事がわかる。


チッ。胸くそ悪ぃ。



ザッ


そこへ避けて通っている人の群れの中にひとり、行く手を塞ぐように立った人物がいた。





「バレル」




リッキー・スターン。

バレルは特に驚く様子もなく、前に立っている彼を睨みつける。


「邪魔だ。退け。もう貴様に用はな…」

「そんな事はどうでもいい」


リッキーはそう言い返した。

先日までの視線とはまるで違う。

真っ直ぐにこちらを見て、はっきりと放たれたその言葉。

周りを歩く人々の目線が確実にこちらへ向いている。


「来て」

「…ッ……!」


注目を集める人ごみの中。

突然腕を掴まれたかと思うと、無理やりどこかへ引っ張られた。


「離せっ」

「………」


連れて行かれる、見た事もない細い路地。

強い力で掴まれていて、なかなか振り解く事が出来ない。

周りに人がいなくなる程、暗い建物の裏へ連れて行かれている。


「離せ!」

「………。」

「離せっつってんだろーが!!!」


ブンッと手を振り解き、怒りのあまり勢いで彼の胸ぐらを掴んでやった。


「調子に乗んなよ、テメェ。いい気になりやがって…」


低いトーンで悪意のある話し方。

誰もが恐怖を覚えるような台詞に口調だが、リッキーの表情は変わらない。

建物と建物の間で、全く陽の光が入らない。

リッキーは怒り狂っているバレルに対し、予想もしていなかった言葉を口にした。





「…殴れよ」


「あ?」


「俺が憎いだろ?」


「……っ…」


「憎くて憎くて…仕方ないんだろ?」


「……」


「じゃぁ殴れよ」




彼の声はいつものリッキーの声ではない。

低い男性の声。



「俺はバレルから色々なものを奪った。プライドも栄光も…居場所さえ。
そして俺は裏切った。あれだけ面倒を見てくれたバレルの事見捨てたんだ」


ギギッと拳を握る音が微かに聞こえる。


片方だった手を両手で掴みかかり、蛇の目で鋭く突き刺すように睨む。



「貴様ッ…」


「殴れよ。俺の事が憎いのなら」


「…ッ!!!」


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