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……………


バコッ!!


「グッ!」

右頬を殴られたリッキーはコンテナに激突し、地面へ倒れ込む。


「はぁ…はぁ…ヴッ!煤v


続けて殴ろうと襲いかかってくるが、下から蹴り上げられバレルは背中から地面へ。


「貴様のせいで!貴様のせいで俺は何もかも全てを失ったんだよ!!煤v


人気のない敷地で殴り合う若者ふたり。

口の中が切れて血の味がする。

お互い何度も何度も倒れ、顔には傷、服は泥だらけに。

自分のか相手のかわからない血が顔や体にこびり付いている。

息が切れ、目の前が霞んで見えなくなりそうになるが、

お互い殴り合うのを止めない。


「はぁッ…はぁッ…グッ!煤v

立ち上がったリッキーをもう一発殴ろうとした所で、足が痛んでバランスが崩れた。

「バレッ…!」





「君達何をしているんだ!」


遠くから男の声が聞こえ、同時に振り返った。


警察だ。


どうやら先程見ていた人々の誰かが通報したらしい。



「クソが…」

「バレル!立って!」


リッキーは足を痛めた彼の腕を肩に回す。

そのまま抵抗する隙も与えずに走り出した。



「コラ!待ちなさい!」


こちらへ走ってきた警官から逃れようと、傷だらけの体のままふたりは走った。

バイクじゃなく自分の足で。

今までこんなに走った事があったかと思う位、全力疾走で。











「ハァッ…ハァッ…」


彼らが逃げ込んだのは空き家の駐車場。

警官がひとりだった事もあり、どうやら上手く撒く事が出来たらしい。


「離せっ」

それが確認出来た所で、バレルはリッキーの腕を振り払った。


「ハァッ…ハァッ…ははっ。なんだかベタな不良漫画みたいな展開だね。」

「‥‥」

息が切れたリッキーは力尽きて地面へ座り込んでしまい、バレルもかなり疲れている様子だが、なんとか立ったまま肩で息をしている。


「本当に…馬鹿だな。貴様…」

口に溜まった血塊を吐き、乱れた茶髪をかき上げるバレル。

「えっ…」

「昔からだったが、ますます馬鹿が増したらしい。…クソくだらねぇ」


彼の言葉を理解したいが、今は全身疲れ切って脳が働いてくれない。

そこでバレルはポケットから何かを取り出し、リッキーに雑に投げた。


「イテッ!」

上手くキャッチしきれず、腕に当たる。


「痛いよ。いきなり何すっ……ッ…」


彼が投げたのは自分がなくしてしまっていたバイクのキーだった。

それにはバレルが昔買ってくれた、蛇のキーホルダーが付いている。


まだ幼いアマチュア時代。

初めて一緒にドライブに行った帰りに立ち寄ったショップ。

自分が「そんな怖いピアスなんて絶対しない!」と全力で拒否して、それならとキーホルダーを買ってくれた。

俺達は初めから全然好みの傾向が違ったから、

これが唯一彼とお揃いの思い出の品。

あの日から毎日使っているから錆び付いて随分汚くなってしまったが…

それでもずっと持っていたかった大切なキーホルダー。




彼はそれを渡すと、そのまま何も言わずに背を向けて歩き出していた。


「バレル!」

「……。」


リッキーが名前を呼ぶと立ち止まり、目線だけチラリと向ける。


「ごめん…!俺…やっぱりウィンディランを辞めたくないんだ!」


「………。」


「今の仲間と別れたくない!

大切な…本当に大切な人達だからっ…

だから…」




「もういい…」


「…っ……」










「俺は…あんな馬鹿な連中とは付き合えない」



最後に一度だけこちらを見てくれ、彼はこの場所を去って行った。


その言葉と表情には、恨みとか悪意は感じられず

ほんの少しだけ穏やかに見えた。


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