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……………
チック
タック
チック
タック
時計の秒針の音が自然と耳に入ってくる。
恐らくいつもついている大型テレビの電源が入っていないからだろう。
その太く短い針は、ナイジェルが自室へ戻ってから確実に数センチは進んでいた。
「ダウト!」
「えぇ!お前なんでわかんだよ!なんかズルしてるだろ?」
「僕の目をナメめてもらっては困るよ。この目はね…見えルンです」
「見えルンです。って…写●ンですみたいに言うな」
「フルカラー、写●ンです♪」
「歌うな」
ナイジェルが自室に戻って一時間半。
残り3人の男達は、暇潰しにとリッキーが持ってきたトランプをしていた。
「今時トランプなんて」と、初めはジムやボビーも馬鹿にしていたが、やってみるとこれが意外とハマってしまったらしく、大の大人が勝利の為に意地になって、相手のカードを読もうと頭をフル回転させていた。
ボビー「よし、じゃぁもう一度やるぞぉ!はい1!」
リッキー「2!」
ジム「3!」
ボビー「4!」
リッキー「5!」
ジム「6!」
ボビー「7!」
リッキー「8!」
ジム「9!」
ボビー「10!」
リッキー「11!」
ジム「12!」
ボビー「13!」
リッキー「14!」
ジム・ボビー「はいリッキー(君)、ダウトー!」
「あ!ズルい、騙しましたね!?」
「騙してねぇよ。今のはお前が馬鹿なだけだ」
馬鹿な後輩に全てのカードが行き渡った所で、ジムが動き続ける時計を見上げた。
「そういえば、ナイジェル大丈夫かな?」
「そうだねぇ。あれは僕の家で調合したマローン家秘伝の薬だから、一般人が飲むと効果がありすぎて命を落とす事もあるからねぇ」
「「…………。」」
トランプを集めながら何気なく言ったボビーの一言に、ジムとリッキーは瞬きもせずに彼の黒い横顔を見る。
ジム「えっ…ボビー君。ごめん…ぼく、今よく意味がわからなかった。もう一度言ってもらってもいいかな?」
「だから、あれは僕の家で調合したマローン家秘伝の薬だって言ってるじゃないか」
リッキー「いや…その先です。幻聴かもしれませんが…命を落とすとかなんとか…」
「あぁ。強力な薬だから、一般市民が飲んだら体が緑色に変色して死んじゃうかもしれないって話だよ」
「「…………。」」
チック
タック
チック
タック
今度こそ秒針の音がはっきりと聞こえる程の静寂。
ジムとリッキーの顔色が肌色からわかりやすい青色にサーッと変わり…
「「ナイジェルゥゥゥゥッ!!!!!!」」
突然全速力で走り出し、その突風でボビーのヘアスタイルが乱れた。
物凄いスピードで階段を2段飛ばしに駆け上がる。
ガチャンッ!
「ナイジェル、大丈夫か!?」
「ぅぐぐぐっ…」
強く扉を開けると、案の定、窓側のベッドで彼が苦しそうに横たわっている姿が発見出来た。
「ナイジェル!」
そのまま彼の元へ駆け寄ってリッキーが体を抱えると、下のシーツがぐっしょりと濡れている。
額に大量の汗をかいてうなされている様子を見る限り、ふたりの声も届いていないようだ。
「ナイジェルッ!しっかりしてください!」
「オイ!大丈夫か!?」
「グ…ググッ…」
体が熱い。
力が入らなくて、フワフワと浮かんでいる感覚。
朦朧とする意識の中、必死に出口を求めて彷徨い続け
そして…
「……ッ!!!」
悪夢から目覚めたようにパチリと目を開けた。
「あ!良かった、無事みたいですね」
ふと、抱えているリッキーの心配そうな顔が目に入った。
そのナイジェルの表情は生死の境を彷徨ったにもかかわらず、口を半開きにしてぽかんとしている、なんとも情けない顔。
「心配したんだぞ。ボビーが劇薬をお前に渡してたらしいか……ん?」
ジムが話しかけても、全く反応をしないナイジェル。
彼はリッキーの顔をじっとガン見したままだ。
「ナイジェル?どうした?」
「リッキー…」
「ん?俺の顔に何か付いてますか?」
「お前……可愛いな」
「へっ?」
目覚めていきなりの一言。
リッキーは驚いて、思わず抱きかかえている手を離してしまった。
「いっ…いきなり何を言ってるんですか!?////風邪で頭がどうかしちゃったんですか?」
「どうもしてねーよ。ただなんか…お前がすげー可愛く見えて、体が猛烈に熱いんだ…」
「絶対どうかしてますって!わわわっ!」
ベッドから降りてこちらへ来ようとする彼に、リッキーは怖がってジムの後ろに隠れた。
ジムも突然の事に驚いた表情を隠せない。
「ナ、ナイジェル?そのっ…どうした?大丈夫か?」
「お前には興味ねーよ。俺が欲しいのはリッキ…」
「うっ…ちょ…来ないでって!わぁぁぁぁッ!」
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