3
……………
「はぁっ?惚れ薬!?」
メインルームでジムは思わずボビーの肩を両手で掴んだ。
「あぁ。どうやら風邪薬と間違って惚れ薬を渡しちゃったみたいなんだ。それを飲むと目が覚めて一番最初に見た人を好きになってしまうんだよ。命には別状ないから安心したまえ」
「安心出来るわけないだろうが!」
目の前の滑稽な光景を見て、そう思わないはずがない。
半泣き状態で逃げているリッキーを、ビッキーのごとく追いかけ回すナイジェルの姿。
キッチンをぐるぐる、メインルームをぐるぐる。
「廊下は走るな」と壁紙が貼ってある廊下を全力で走っている。
愛しのサラちゃんでも、ここまで体力を使って追いかけたりした事例は今まで一度もない。
「大体そんな薬どこで手に入れたんだ?」
「駅前のコンビニだよ。座薬を買おうとしたら間違えちゃったんだ」
「座薬って尻に入れるヤツだろ!?というか駅前のコンビニはなんてもの売ってるんだ…」
そこでリッキーを追いかけていたナイジェルが、突然ロボットのようにピタリと止まった。
何故か視線はこちらに向いている。
「お、やっと諦めたか?ナイジェル」
「…何を?」
「ん?」
「何を尻に入れるって言った?」
ヤベェ!
コイツ、男に惚れて
あっち系の話に敏感になってやがる!!!!
「いっ…言ってない言ってない!な、ボビー!」
ジムが必死にフォローに回るが
「チューッと注入するタイプだよ」
「紛らわしい言い方をするな!話がややこしくなるだろ!1000円あげるから、お前は近くの薬局でボラギノール買ってこい!」
財布からお札を取り出しボビーのパンツに突っ込んで、無理やり彼を外の世界へ追い出した。
アイツがいれば、また何を喋るかわかりゃしない。
「注入するタイプなのか?何を注入するんだ?」
「お前もそろそろ目を覚ませ!」
パチンと頭を叩いても効果がなく、ナイジェルは思い出したように再びリッキーを追いかけ始める。
「ったく…。リッキー、お前は自分の部屋に入ってろ。全室鍵を閉めるんだぞ」
「は…はい!うわっ!来ないでくださいってば!」
「あっ…待て!リッキー!俺達も注…」
「はい、そっから先は『ピー』になるから言っちゃダメだぞ」
オッサンの肩を掴んで、リッキーが階段を上がる姿を確認する。
ガチャン!
2階から鍵の閉まる音が聞こえるまで、彼が変な動きを起こさないようきっちりガード。
「離せよ!俺はテメーみてぇに使い古されたオッサンには興味ねんだ!」
「お前が一番使い古されたオッサンだろーが!」
- 334 -
*PREV NEXT#
ページ: