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……………
ボビーが買ってきた問題の惚れ薬を、誤って飲んでしまったナイジェル。
目が覚めて最初に姿を見たリッキーに惚れてしまい、追いかけるどころかセクハラまがいな事までしようとする始末。
冗談じゃない。
どこにそんなマニアックな映像を観たがる視聴者がいるんだ。
とりあえず患者をメインルームまで連れてきたジム。
彼をソファーに無理やり座らせて、自分が後で飲む為に注いでいたコーヒーをテーブルに出した。
「とにかく、これでも飲んで落ち着け」
「嫌だよ。お前が注いだコーヒーよりリッキーが注いだコーヒーが飲みたい」
「………。リッキーが注いだんだ、これ。だから飲め」
「そうなのか?じゃぁ飲む」
面倒くせぇ。
「で?風邪の方は大丈夫か?」
「リッキーは?」
「もうそろそろ、サラとビッキーも帰ってくるはずだ」
「リッキーは?」
「とりあえず、帰ってきたらサラにおかゆでも作ってもらえ」
「リッキーは?」
面倒くせぇしムカつく。
ジムは大きくため息をついて、コーヒーを飲み続けているナイジェルと同じ視線に腰を落とした。
「いいか?ナイジェル、よ〜く聞け。お前は男か?女か?」
「馬鹿か。俺が女なわけねーだろ」
「そうだ。そこまではきちんと理解してるんだな。じゃぁもうひとつ訊くぞ。リッキーは男か?女か?」
「んなもん、男に決まってんじゃ…あれ?」
そうだそうだ!よく考えろ!
お前も男、リッキーも男。
何かが間違っている事に気づけ!
「あぁでもアイツ、顔は女みてーだし…」
「顔は関係ないの!大体、俺達男同士で風呂に入った事もあるだろ!?
アイツは男だ!つまり…その…男同士は結ばれない!法律上、それは認められていないんだ!だから諦めろ!」
よし、よくまとめた俺!
こう他人からキッパリ言われて、己の間違いに気づかない馬鹿がいるわけ…
「じゃ、俺手術するわ」
…いたぁぁぁぁぁッ!!!!!!!
なんか開き直って「手術する」とか言い出してる!!
ふざけるな!
リッキーとナイジェルが結婚すると仮定して、どうして女になるのがオッサンの方なんだ!?
逆だろ、普通!!!
「どーした?」
「あ…いや別に…」
壁に寄りかかり、ひとりもがき苦しんでいるジムの姿を見て、ナイジェルは不思議そうに首を傾げた。
…待て待て待て、俺はなに勝手に結婚を認めてるんだ?
させるわけないだろ、そんなもの!
ジムは息を荒くし、自分も病人のような足取りで本棚へ向かった。
取ったのは一冊の分厚いアルバム。
その中から更に一枚の写真を抜き取ってナイジェルの元へ戻っていく。
「何?」
「サラの写真だよ…」
持ってきたのは、3ヵ月程前にサラを怖がらせようと遊びに行った遊園地での一枚。
観覧車の前で(ナイジェルが隠して)撮ったサラの写真だ。
「いいか?お前が惚れてるのはこの女だ。リッキーじゃない。むしろアイツもサラに憧れてるから、お前らふたりライバルみたいな関係だっただろ?」
ジムからその写真を受け取り、眉間にシワを寄せて彼女の姿を見てみる。
眩しい太陽に堪え兼ねたらしく、手を眉辺りに置いて遠くを眺めている一枚の写真。
長い金髪を束ねて、項が見えている。
この男がこれを見て喜ばないはずがない。
「ジムッ!この写真…俺にくれ!」
来た――ッ!
ほら、やっぱり!
コイツはやっぱり男なんか好きじゃなかったんだ!
ちゃんと女が好…
「奥にリッキーが写ってる!」
お前なんで入ってんだよ―ッ!!
心の中でちゃっかりフレームインしていたリッキーを大声で怒鳴ってやった。
クッソ!メインに写ってんのサラじゃねーか!どこ見てんだ、お前!
つか、リッキーちっちゃ!
それに後ろ姿だし!
他の大勢の客に巻き込まれてるし、しゃがんでるし、下向いてるし!(一度だけ迷子になった時だろう)
これ本当にリッキーなの?
俺にはゴマ粒にしか見えないんだけど!!!
「あぁ…もうダメだ…。俺には手がつけられない…」
「だからどーした?」
床に突っ伏してブツブツと独り言を言っているジムに、再びナイジェルは首を傾げていた。
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