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『今朝、ワシントン郊外にあるマンションの一室から男性の遺体が発見されました。
殺害されたのはロバート・ワトソンさん、44歳。
この地域で働く銀行職員との事です。
ロバートさんは●日午後0時頃、自室で寝ていた所を何者かに襲われ、帰宅した妻に発見されたとの事です。
部屋には荒らされた形跡があり、警察は強盗目当ての犯行と見て捜査を続けています』
「物騒な世の中だよな。なんにも悪い事してないのに殺されちゃ、たまったもんじゃないぞ」
ソファーに楽な体勢で座り、ジムとビッキーはお昼のニュース番組を見ていた。
昨日は外回りに出かけ、本日は数少ない3連休の初日とあって、レースをしている時の緊張感は微塵も感じられない。
「は!?何言ってんの、バーリン!」
「バーリンじゃない、俺はジムだ。泥棒目的の見ず知らずの奴に殺されるんだぞ。何がおかしいんだよ?」
「犯人はこの妻に決まってんじゃない!きっとこの夫は別の女と浮気をしてて、それがバレて妻の雇った殺し屋に殺されたのよ!」
「お前な、そんなドラマみたいな話があるか!」
テレビの液晶を指さしながら自信に満ち溢れた推理を披露するビッキー。
どうせその辺で観た映画かドラマの影響でも受けているんだろう。
相変わらずの単純脳だ。
ブーッ!ブーッ!
「ん?」
ふたりを隔てているテーブルから細かい振動が足に伝わり、騒がしい会話が一旦終了。
これは携帯バイブだ。
隅に置いてあったピンクの携帯を手に取ったジムは、付いている月のストラップからすぐに彼女の携帯だとわかった。
「おい!サラ!携帯鳴ってるぞ?」
鳴り止まない事からメールではなく電話だと確信し、昼食後の洗い物をしている持ち主の名前を呼んだが…
「今、手が離せないの。勝手に取ってて」
なんとも適当な返事がキッチンから返ってきた。
彼氏でもない男に自分の携帯を触らせるなんて、余程何も入っていないか、それを気にしないタイプなんだな。
「わかった、出るぞ!」
後から訴えられないように、きちんと言葉で伝えて携帯を開く。
「ヴッ」
「ねぇ!誰?誰?」
ビッキーが前のめりになって携帯を覗こうとするが、
ジムは鳴り続けている画面一点を見つめて顔を引きつらせたまま。
「え?もしかして男!?」
「…あぁ」
「本当に!?凄い!見せて見せて!」
確かに…性別は男に違いない。
でも、ビッキーが思っているような…そういう意味の男でもなくて。
『美空 七音』
その名前が表示されている。
限りなく…
嫌な予感しかしない。
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