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……………
背の高い建物が密集した街の道路。
6人を乗せたワゴン車は、某音楽事務所の入口ゲートをくぐった。
車のたくさん停まった駐車場。
ぶつけずに一発で枠内に車を入れる作業はお手の物といった感じだ。
「ったく、相変わらず自分より年上の大人を家来みてぇに扱うな」
駐車を済ませ、シートベルトを外しながらナイジェルは眉間にシワを寄せた。
「で?七音君、なんで私達を呼んだの?」
「知らねーよ!だってアイツ、俺が電話に出て早々
『来てよ』
これだけなんだし!
お前はちゃんと言葉の最初に主語を入れろっていつも言ってるのに全然聞かないんだもんなぁ」
「どうせどーでもいい事なんでしょ。あぁ、なんでこんなクソ暑い中呼び出されなきゃなんないのよ」
残暑がまだ強く残る8月末日。
地面のコンクリートが太陽の光を反射して、それがまた余計に暑苦しく感じられる。
サラは額の汗を手で払った。
早く涼しい場所へ行きたいと足早に6人は建物の中へ入り、美空から指定された部屋へと歩いた。
確か電話で言っていたのが、2階に上がって一番右側の部屋…
「ジムさんー。待ってたヨン様♪」
テーブル、ソファー、テレビ、観葉植物などがバランス良く配置された室内。
入るなりいきなり軽いテンションで現れたのが噂の問題児、美空 七音だ。
ったく、俺達はこの夏の暑い中を来てやったというのに、コイツはこんな涼しい部屋で…(怒)
「わぁ!この部屋涼しいー」
「あ、ビッキーちゃん、今日も可愛い服着てるね!このキャミソールとかセクシーでベリーキュート!」
「本当!?これお気に入りなんだよ!あのねあのね、サンプラに新しく出来たショップで…痛っ!」
ビッキーの耳をジムが、そして美空の耳を雨宮が同時に引っ張った。
「皆さん、ご無沙汰しております。ウチの七音がまた貴方方を呼んでしまったみたいで…本当に申し訳ありません」
まるで母親のように美空の後頭部に手を置き、一緒に深く頭を下げさせる。
「いや、多分そんな事だろうと思ったから気にしないで」
「すみません。七音といったら…最近困ったらすぐにジムさん達を呼ぶ癖が付いてしまったみたいで」
その言葉にジムの隣にいたリッキーが軽く首を傾げた。
「雨宮さん達、何か困ってるんですか?」
「え…あ…いや、その…」
動揺して眼鏡の縁を親指で軽く持ち上げる彼。
抑えつけられた手を振り切り、美空は頭を上げた。
「そーなの、困ってんの僕達!見てよこれ!!」
問題児から突然渡されたのはA4サイズの紙の束。
見覚えのある細かい升目が印字され、なんだか不思議と懐かしさが込み上げたそれは…
「作文用紙?」
自信満々に…何故そんなに自信があるのかわからないが、七音はとりあえず自信満々に深く頷いた。
これは学生時代に、誰もが一度は使った事のある作文用紙だ。
どちらかというと面倒な思い出ばかりが蘇るが、これが一体…
「あ。8月31日…」
ジムが考えている途中に、後ろでナイジェルがぽつりと呟いた。
そのキーワードからすぐに関連した行事が思い出され…
「あぁ!夏休みの宿題か?」
「そうだよ、読書感想文!」
ジムにとって夏休みの宿題といったら、休みを満喫する為に前半にほとんど終わらせるもの。
だからすぐにその発想が出てこなかった。
さすがナイジェル。
お前は周りの期待を裏切らない少年時代の夏休みライフを送ってたんだな。
「はい。実は今月はライブや取材が多く重なり、学校の宿題を終わらせる時間がほとんどありませんでした。
他の提出課題はなんとかこの日までに終わらせる事が出来たのですが、この読書感想文のみ本日まで残ってしまって。
朝から急いで取りかかろうとしたのですが、本日一日で終わらせなければならないという焦りと、あまり慣れていない作文という作業に、なかなか終わらせる事が出来なくて困っていたんです」
雨宮の無駄に丁寧な説明に、ナイジェルだけが何故か何度も頷いていた。
「そうか。それで七音は俺達に手伝って欲しいと思って電話してきたんだな」
「違うよ。ジムさんに全部書いてもらおうと思っ…痛っ!」
今度は眼鏡のお母さんにグーで殴られた。
「確かにお前ら、普通の高校生よりかなり忙しいからなぁ」
「でも私達も別にこういう文章考えるの得意なわけじゃないし、何より数年ぶりって話だから下手すれば現役学生の貴方達より上手く書けないかもしれないわよ?」
「あぁ…それなら心配いりません」
サラの言葉に雨宮は悲壮感漂う顔で軽く笑った。
その根拠はどこから…
ガチャン!!
「見てぇーっ!リツ君、書けた書けたぁ!」
慌ただしく廊下を走って扉を開けたのは、女性のような白い肌と赤い瞳を持った雪之原。
今まで別室で噂の読書感想文を書いていたらしく、それが完成して雨宮に見せに来たのだ。
『うさぎの冒険を読んで 雪之原奏
なんか…面白かったぁ♪あははあははあはは』
雨宮「ボツ」
ビリビリッ!
「あああああああ!」
やり直しを命じられ、泣いて別室に戻っていく雪之原。
ガチャン!!
「雨宮さぁんっ!!ついに出来たっすよ!今までで一番の最高傑作っす!!」
次に慌ただしく扉を開けたのは、デコっぱち熱血ギターの日晴。
『燃える太陽を読んで 日晴響介
真っ白に燃え尽きたぜ…』
雨宮「ボツ」
ビリビリッ!
「うあああああああ!」
やり直しを命じられ、泣いて別室に戻っていく日晴。
『He wants to return already, so please decide on this. Cloudy Melodious』
雨宮「ボツッ!」
ビリビリッ!!
「………ッ!煤v
やり直しを命じられ、しょんぼりして別室に戻っていくクラウディ。
雨宮「読者が読める言葉で、今の文章より上手く書ければ問題ありません。力を貸しては頂けないでしょうか?」
ジム「うん……そーだな。今のレベルよりも上手く書ける自信だけはあるよ」
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