……………

第1段落 〜桃太郎誕生〜

「まず最初の段落は…雨宮君。貴方にお願いするわね」

サラから軽く背中を叩かれて、珍しくピクッと可愛く反応を示した彼。


「え?僕ですか?」

「あぁ。weather lifeの秀才として、ちゃちゃっと他の4人に手本を見せてやってくれ」

「は…はぁ」


気の抜けた返事。

とりあえずペンを握り、作文用紙に視線を移した。


「ミヤ君、桃太郎わかる?川から眼鏡は流れて来ないから気をつけて(笑)」

「馬鹿にするな。僕だって桃太郎の内容くらい知っている」


口出ししてきたふざけ七音に荒く言い返して、とりあえずタイトルを書く。



ビッキー「雨宮君が担当する場面は、おばあさんが川から流れてきた桃を家まで持ち帰り、おじいさんに報告。
ふたりで割ったら中からなんと可愛い男の子が…!

まぁ、大体ここまで。簡単でしょ」

「わかりました。たったそれだけのシーンの感想なら、僕にとっては朝飯前です」

数秒頭の中で内容を整理し、全員が見つめる中早速ペンを動かし始める雨宮。


『桃太郎を読んで

僕は桃太郎について疑問に思う点があります。

それは桃から人間の子どもが誕生するという事です。

人という存在は女性の子宮の中で受精卵から徐々に人間の体へと変貌を遂げ、そして人間の体から産まれてくるのが常識です。

精子と卵子があったとしても桃の中で受精卵が出来上がる事などまず考えられませんし、例えその桃に誰かが受精卵を入れ込んだと仮定しても、桃の中には成長に必要なエネルギーが存在しない為、赤ん坊が育つ事など現実的には確実にありえません。

大体おじいさんが山へ芝刈りに、おばあさんが川へ洗濯に行くという時代に、桃の中に受精卵を入れ込むという特殊な技法など存在しないと考えられま…』


「ストップ!ストップ!!ストッ―――プ!!」


ジムの声で怒涛に書き進められていた雨宮のペンがピタリと止まった。


「なんですか?せっかく良いペースで書き進められていたのに」

「ちょ…違うんだよねぇ!これは…読書した感想の文なのかもしれないけどっ…これはちょっと違うんだよねぇ…」


七音「いーじゃん、これで!ミヤ君続き書いてよ」

ジム「思春期は黙ってNARUT●でも読んでろ!」


部屋の隅に落ちていた漫画本を美空に投げつけようと振り上げた瞬間、後ろの雨宮からスルリとそれを奪われた。


「黙るべきなのはジムさん、貴方の方です!僕の書いている内容のどこが間違っていると言うのですか?」

「だからっ…間違ってるわけじゃなくて、あのね…俺はもっと高校生らしい文章を書いて欲しかったわけよ?」

「内容を追求し、あらゆる疑問を科学的に証明する事も立派な高校生らしい行動です。
事実、日本昔話の原作によると、桃太郎は川から流れてきた桃を食べて若返ったおじいさんとおばあさんの間に産まれた子どもとして記述が残っているのです。
それを子ども向けに内容を安易に訂正したものが一般的に知られている桃太郎なのです。
しかし我々はもう子どもではありません。立派な大人として、事実を知る権利があると…」


ナイジェル「もうコイツの台詞読むの面倒くせーから次行こーぜ」


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