……………

「ふぅ…腹一杯。やっぱ日本食は美味いな」


幸せそうに腹をさするナイジェル。

単細胞な彼でも幸せを感じる機能は一般人と同じらしい。

他のメンバーの皿も空になっていて、無事に食事が終わったようだ。



「いらっしゃいませ。3名様ですか?」

「ご注文を繰り返します」


気がつくと周りが先程よりもザワザワしている。

時計は丁度昼の12時半をさしていた。


「お客、増えてきましたね」

「お昼だからね。さて、邪魔にならないうちに私達は帰るわよ」


満腹になった各々が自分の荷物をまとめ始める。

本日は休日故、特に帰ってもやる事はないのだが、ここでダラダラ話すのも他の客に迷惑だ。


「ビッキーちゃん!僕が君の分を払ってあげるよ★」

「え!本当!?たまには役に立つじゃん、ボビー!」

「任せておきたまえ!今日はビッキーちゃんに奢ってあげる為だけに、銀行から貯金を全額おろしてきたのだから!」

ナイジェル「ご馳走さん」

ジム「ありがとな」

リッキー「美味しかったですよ、ボビー♪」

「………?」

ボビーの手に伝票が乗せられる。

最後にサラから軽く頭を撫でられて、他のメンバーは出口へ向かった。



「ちょ!ちょっと待ちたまえ!僕はビッキーちゃんの為だけに…」




ガシャンッ!!!



「…あ?」


扉を開けたその瞬間、突然キッチンの奥から何かが倒れるような大きな音が聞こえた。


「りょ…料理長!」

先程接客をしてくれたルーイというウェイトレスの声だ。



「…っ!ルーイちゃん!」

「あっ、ちょっと!オイ!」


ビッキーはその声が聞こえた途端、慌てて駆け出す。

ジムが急いで追いかけると、そこにはキッチンでしゃがみ込んでいるルーイの姿が。


「うっ…うう…」


彼女が肩を揺さぶっているのは、顔が真っ赤になってグッタリ倒れている髭のコックだった。










「風邪みたいだな」

「料理長…」

「大丈夫だよ。家族の人も呼んでもらえたみたいだし、病院に連れて行けばすぐに治ると思うよ」

ジムは顔の熱いコックの額から手を離し、ルーイに優しく声をかけた。

どうやら辺りを見回してみると、ここの店員の間では風邪が流行っているらしい。

マスクをしている人が他にもちらほら。


「料理長、昨日から体が重いって言ってたんですけど。ウチは今風邪が流行ってて、ただでさえ人数が少ないのに自分が休むわけにはいかないって、無理に出社したみたいなんです」

「そっか」


このままだと他にも無理をして倒れてしまう人が出てくるかもしれない。

それ以前に料理店で料理を作っている人間が風邪気味となれば、いくらマスクをしているとはいえ菌が入ってしまう可能性がある。

ジムは困った顔をして眉間にシワを寄せた。


「じゃ、私達が手伝うよ!ルーイちゃん!」

「えっ?」

その提案を先に出したのは、彼ではなくビッキーの方だった。

ルーイはなんとも驚いた顔で彼女の目を見る。


「だって他にも具合悪そうな人が何人かいるじゃん!空いた穴は私達でなんとか埋めるから、皆お家に帰らせた方がいいって!」

「そんな!お客様の貴方達にそんな事をさせるわけには!」


「大丈夫ですよ。俺達今日休みだからここに来たんですし」

リッキーがにこりと笑って口を挟んできた。


「私もいいわよ。面白そうじゃない、ファミレスの仕事なんて」

「よーし!このスーパークールな僕が鮮やかに接客対応をしてみせよう!」

「そうか…。うん頑張れ。じゃ、俺は帰…」

「ナイジェル、貴方もどーせ帰って寝るだけでしょう?」


サラが口端をつり上げて、帰ろうとするナイジェルの背中側の衿を掴み引き戻す。


ルーイも最初は困惑した様子だったが、6人のやる気のある表情、そしてゴホゴホと咳込んでいる他従業員達の顔を見てようやく決心したらしい。



「ご迷惑をおかけします!」


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