……………

本日はとある祝日の水曜日。

ウィンディランメンバーはいつもの通り、思い思いに好きな事をしながらメインルームで寛いでいた。


「え!今日、ローラさんが来るの?」

「あぁ」

自販機でコーラを買ったジムが話している「ローラ」とは彼の妹の事。

ジムの妹といっても全く地味な要素はなく、小柄で知的。

兄の事を誰よりも慕っている可愛らしい女性だ。

前にあまりの仲の良さから、ジムの恋人だと勘違いして大騒動になった事件は記憶に新しい。


「マジでか?ローラちゃんが来るのか?あの娘は可愛かったなぁ…痛っ!」

思い出してニヤついているナイジェルの頬をサラが無言でつねってやった。


「痛ってぇ離せ!」

「当たり前だ。俺の可愛い妹をお前のような三十路過ぎただらしないオッサンなんぞにはやれない」

「冗談だ、馬鹿…」


赤く腫れた頬をさすりながら、まだ開かない扉を見てみた。

「で?いつ来るんだ?」

「多分もうそろそろ来るかと思うけど」



ピンポーン!



そこで漫画のようなタイミングでチャイムが鳴った。

こんな時間に来客なんて普段はまずないので、彼女に違いない。


「あ、来た」

「よし!登場はこのイケメンボビー様で、ローラちゃんの長旅で疲れた心と体を癒やしてやろう!」

と、素敵な勘違いを起こしているボビーが玄関へと走る。

やめろと言ってもどうせ聞くはずがないのだから、全員が無視して出迎えは彼に任せる事にした。


ピンポーン!



「はいはーい!今、開けるからね、ローラちゃん!」



鍵解除部分へ手をかける。




カチyバシャンッ!!!




「お兄ちゃん!!」


鍵が解除された途端に勢いよく扉が開き、

壁と扉で潰されたボビーは、ペラペラの紙になって風に飛ばされた…。


走って室内に入ってきた妹は相変わらず美しいままだったが、今日は何やら様子がおかしい。


「ローラ、久しぶりだな。待ってたぞ」

ジムが久々に会う妹を出迎えたが、

「ただいま」でも「久しぶり」でもない、想像もしていなかった言葉が彼女の口から第一声として飛び出した。






「私…好きな人が出来たのっ!」



「「…………。」」



6人の目が黒ゴマ粒になる。

久々に来て早々……好きな人が?


誰も状況が理解出来ずに部屋が無音状態になる中、ジムは何も言わずにメインルームの中央まで歩き…




「ふざけるなぁぁぁぁぁぁあッ!!Σ」


某アニメのようにテーブルをひっくり返しながら叫んだ。
















「ダメだダメだダメだ!誰なんだ?純粋でピュアなお前をたぶらかす悪い男は!」

「違うの!悪い人じゃないの!彼は私を悪い男の人達から助けてくれた格好良い人なの!」

「お前は将来お兄ちゃんと結婚すると言っていただろうが!だから絶対ダメだ!」


兄妹の言い争いが始まって10分。

このようなやり取りが飽きる位何度も続いている。


「ったく、これだからシスコンは…」

「シスコンって何ですか?システムコントローラーの略ですか?」

「リッキーはまずシスコンの意味を辞書で調べてきなさい」


サラに言われてリッキーが本棚まで走る行動を無視し、ナイジェルがお馴染みのタバコを吸いながらローラの横に立った。


「いーじゃねぇか。ローラちゃんだってお年頃なんだから。恋愛のひとつやふたつ…」

「そうよそうよ!運命の出会いはどんな女の子にだって訪れるものなのよ!私とリッキーみたいに!」

ビッキーの言っている内容に若干疑問は残るが、他のメンバーも妹のローラの味方をしているようだ。

1対6ではどうやら分が悪いとわかり、ジムは再び妹に目を向ける。


「あのさ、聞くけど…その人は一体どんな人なんだ?」

「名前は知らないんだけどね、スッゴく格好良くて…ハンサムで…素敵で…強くて…」

「そういうのはいいから。特徴とか性格とか」

「特徴?えっと…髪は茶髪だったかな。あと怖いピアスをしてて、口調が荒々しくて冷たくて人を蹴り飛ばして…」




…―あっち系の人!!!!!?


背中に「喧嘩上等」と達筆な文字が書かれてある学ランを羽織った、強面のリーゼント男を全員が想像した。

当然の事ながら兄の顔が真っ青になる。


「やっぱダメだぁ!お前を極道の女にしてしまっては、俺は親父とお袋に合わせる顔がない!」


「極道?」とローラが首を傾げ、そんな兄妹のやり取りを聞きながら5人は眉をヒクヒクと動かしていた。


「あ!そういえばね!」

「何だ?特技はカツアゲなんて言われても…」

「その人、そこのファミレスの店員さんだったよ!」


「ファミレ………はッ!」



全員の頭に同じ男の顔が浮かんでしまった。


茶髪に怖いピアス。

荒々しい口調に冷たい顔。

それにアイツなら人を蹴り飛ばしかねない!


お兄さんどころか、お兄さんのお友達までローラの将来を想像し顔が青々と変化していく。


「ローラ…」

「何?お兄ちゃん」

「俺もウェイターに転職すればいいのか?」




「……え?」


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