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……………
「お前ら何すんだ、離せ!」
ついにロープでグルグル巻きにされ捕獲されてしまったジムという名のシスターコンプレックス。
彼はローラとバレルから遠ざかった草陰に連れて行かれ、動けない目線の上には5人が周りを囲うように立ち塞がっていた。
「ジム、お前な…いくら何でもやりすぎだぞ。妹が大事なのもわかるがいい加減シスコンも卒業しろ」
リッキー「シスコンって何ですか?死するコンテストですか?」
サラ「そうよ。リッキー、出場してきなさい」
ある程度ダメ兄貴に説教をした所で、ナイジェルは縄を解いた。
「もういいじゃねーか。ローラちゃんの恋が実るかどうかは、正直本人次第なんだ。周りがとやかく言ったって何も変わらねぇ」
「んん…頭じゃわかってるんだがな。体が勝手に」
「ここまで来たら完全に病気ね。病院でお薬貰ってくれば?頭の」
ジムは深呼吸した後に腰を上げ、お尻についた土を軽く叩いて払った。
「でもナイジェルの言う通りですよ。まぁ…バレルも嫌がってる様子もないですし、大丈夫なんじゃないんですか?」
「だってアイツ、ローラの言葉を全部無視してるじゃん」
「喋るなって言ったの君だよね?」
ボビーが表情を変えずにジムに言い放ち、ズーンと落ち込みモード突入。
「でもな…やっぱりあんな悪そうな外見の男に…」
「しつこいわね。私達がどう足掻こうとアンタはローラさんとは結婚出来ないのよ?」
「あ、なるほど。その手があるな!」
「リッキー、やっぱもう一度コイツを縛れ」
「あっ!ねぇ見て!」
ナイジェルがリッキーに再びロープを渡した瞬間だった。
ひとりだけローラとバレルの観察を続けていたビッキーが慌てて手招きをして5人を呼び寄せる。
「どうしたの?」
「ローラさん、何回もお辞儀してるよ!もう帰ろうとしてるんじゃないの?」
「そうなんですね。連絡先とか聞けたんでしょうか」
並んで6人、草陰から顔を出してふたりの様子を観察する。
確かにお開きのような空気だ。
バレルはスタート時と変わらず、終始無言で表情も変わらない。
「本当に喋らなかったね。よっぽど串刺しになりたくなかったんだ」
「この兄貴じゃマジでやりかねんからな。ま、よかったんじゃねーの?これで…痛ッ!」
まるで他人事とタバコの煙を吐いたナイジェルの頭を、ビッキーが履いていたパンプスでスパン!とひっぱたいた。
「何しやがんだ、小娘!」
「甘い!こんなしらけたデートで男女の愛が生まれると思ってんの!?」
男女の何を知ってるのかは知らないが、ビッキーはパンプスを履き直し、鼻息荒く立ち上がる。
「いい!?男女のときめきデートで重要なのは
ギャップ・見え隠れするエロ・そしてスリルよ!!」
「何それ?」
「ああいう普段ツンケンしてる男子が、ふとした瞬間に優しい行動を取ったり気遣った言葉をかけてくれるときめきがキュン度1!
女子の胸の谷間を見たり、生足を見て、照れて自分を抑えようとする淡い下心にキュン度2!
そして、そこでふたりを突然襲うピンチ!
渡っている橋が切れ、女性の手を必死に掴む!
炎に包まれる中、足を怪我した女性を背負って走り抜ける!
何事も命の危機にさらされピンチになると、その場は素敵なときめきの鼓動で満ち溢れ、キュン度はMAX!」
「「…………。」」
腕で「×」の文字を作るビッキー。
どうやらMAXの「ックス」を表したいらしい。
そんな彼女の勢いに5人は何故か正座して聞いてしまっている。
「というわけで、ロザン!これを着なさい」
「ジムだッ……何だこれ?」
彼に渡されたのは「バックレ最強」と背中に達筆な字が刺繍されている学ランと、黒髪リーゼントのカツラ。
「何寝ぼけてんの!ここには腐敗した吊り橋も、火事になった大きなお屋敷もないでしょ!?
となると残りのピンチは、不良に絡まれた時、男性が命がけで女性を守るドキドキシチュエーションだけ!
血にまみれる男子は女子をキュンキュンさせるからね♪」
「俺にその不良役をやれと言うのか?」
「当たり前よ!早く着替えなさい!!」
ビッキーに背中を強く叩かれて、ジムは渋々ヤンキー学ランを羽織り始める。
「まぁ、暴漢から襲われる所を助けてもらうと女子は嬉しいものなのかもね」
「サラちゃんには経験ないもんね。君はその暴漢を強姦するか…ぐぐっ!痛い!」
「面白そうじゃないですか。ジム、頑張ってください!」
「ったく、お前らは他人事だと思って…」
最後にリーゼントのカツラを被り、他メンバーに爆笑される。
小学生だな、コイツら。(こんなコスプレしてる俺も人の事言えないが)
「あ!あとこれ!」
そこで不良スタイルを決めたジムに、ビッキーから何故かフライパンが渡される。
「え…何これ?」
「鉄パイプの代わりよ。さすがにそんな物騒な物は手に入らなかったから、『ジョイント』でルーイちゃんに借してもらったの!」
「そんな格好悪い不良を演じなきゃならないのか!?『バックレ最強』が手に入るなら、鉄パイプなんて楽勝だろ!」
一昔前の不良の格好をして、何故か強引にフライパンを握らされる。
手ぶらよりマシかと思ったが、絵的にはかなり不自然だ。
我ながら…格好悪い。
まぁ、これで可愛い妹の恋のキューピットになれるのなら文句なんて言ってられないな。
6人は再び帰り際のバレルとローラに目を向けた。
「あれっ…?」
人数が…なんだか先程より増えている。
12…3…4…
男女の前にもうふたり、男が立っていた。
ニット帽を被った痩せ気味の小柄な男性と、体格の良い銀髪の男性だ。
「誰?」
「バレルの友達じゃないのか?」
「んん…でもなんか違う気がします」
リッキーは目を細めて見てみるが、あんな男達がバレルの友人にいた記憶はないようだ。
話している声は聞こえないが、そのふたりの男が口を動かし始めると、ローラは怯えてバレルの後ろに隠れ始めた。
一体どうしたという…
「……ッ!!」
痩せ型の男が取り出した物に全員が息を飲んだ。
長い金属バットだ。
全く同じ物を体格の良い男も取り出す。
「オイッ…!ちょっ…マズいんじゃねーか?アイツらマジの不良っぽいぞ!?」
「もしかして、ローラさんを襲った男ってあの人達じゃない!?彼女言ってたじゃない、悪い男の人達から助けてくれたって!
バレルに返り討ちに遭ったから、仕返しに来たのかも…」
サラの言葉に空気が突然張り詰めた。
これはマズい。
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