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……………
30分待ってようやく観覧車のゴンドラに乗り込む事が出来た。
淡い青色のゴンドラ。
暗くてあまり色の認識は出来なかったけど。
数分かけて下の景色はみるみる小さくなり、逆に暗い空が大きく近く見えてくる。
何度も観覧車には乗ってきたが、やはりこの瞬間は毎回胸が高鳴ってしまう。
「わぁっ!高くなってきた!トールも見なよ!」
「ジムだ。本当、高いなぁ」
いつもの台詞は適当に返す。
ジムの目線は外の景色ではなく、目の前のビッキーに向いていた。
見られている事なんか知らずにのんきに笑っている彼女の横顔を見ていると、自然と口元が緩んでしまう。
自分は今まで、何を女みたいにウジウジ悩んでいたんだろう。
彼女の笑顔を見ていると、散々悩んでいた事がなんだかこの下の建物のようにちっぽけに思えて大きなため息をついた。
「悪かったな。この間は急にあんな事言って」
「え?」
突然話を振られ、現実の世界に戻された気がして、少しだけだが心臓がドキッと高鳴った。
前に座っているジムには、怒っている様子も悲しんでいる様子もない。
瞳を下に向けて、穏やかな顔をしている。
「…どうしたの?」
「お前を泣かせるつもりも困らせるつもりもなかったんだ。あの時は自然に…本当に自然に口からポロッと言葉が出てきて…その瞬間は言った自分が一番ビックリしたくらいだった」
「…………。」
「それから事の重大さに気づいて慌てたよ。
『自分はなんて馬鹿な事を言ったんだろう』って。
お前もかなり泣いてたし…酷い事をしてしまった、なんとかしてなかった事にしないとって、その時の俺は思ってた。
でも…その考え自体が間違いだったって仲間に教えられたんだ」
「教えられたって、誰から?」
「リッキーからだよ」
「リッキーから?」
ジムは小さく頷き、口を開いた。
「言われたんだ。俺にこんな中途半端な形で終わって欲しくないって。
俺の思ってる気持ちがやっとこの現実に出せたのに、それをなかった事にしてしまうなんてもったいないって」
ビッキーは今回は口も挟まず、きちんと聞いてくれている。
「後輩からこんなアドバイスされるなんてって思うだろうけど。でも…俺はその言葉でようやく気づかされたんだ。
また、お前を困らせたり悲しませたりするかもしれないけど…
やっぱり…ちゃんと伝えたい」
「…………ッ…」
カラフルな光に反射してキラキラ輝く瞳の中に、一番大切に想っている人がいた。
「俺はビッキーの事が好きだ。仕事仲間としてもだけど、女としても。
いつからかはわからない。
こんな性格だから全然目が離せなくて、危なっかしくて…いつもお前の事、目で追ってた。
世話を焼いて、手のかかる妹みたいな感じだったけど、やっぱり…ふとした瞬間に女としても見てしまう」
「…………。」
「でも、だからってお前を『俺』で縛り付けたくはない。
お前はお前らしく、たくさん良い男を追いかけてワイワイ騒いで…そんな今まで通りの姿でいて欲しいんだ。
俺は、そういうお前が一番好きだから」
「ジム…」
彼の瞳にはこの間まで見せていた迷いが全く感じられなかった。
もう、この気持ちをなかった事になんかしない。
ビッキーの事が好きという感情は間違いなく事実であり、この世に存在する大切な想いだから。
「ただ…こうやってお前の事を大切に想っている人間がいるって事だけ、頭の片隅にでも残しておいてもらえないか?
少しだけでいいから。
それだけで俺は充分だ」
「…………。」
向かい合わせの彼女は、姿勢正しく真っ直ぐ座り手を膝に乗せている。
その手が微かに震えていて
瞳は下を向いたままだ。
そんな彼女の姿を見ていると突然恥ずかしくなったのか、ジムの顔は徐々に赤くなり、パチンッと自分の両手を叩いた。
「…はい、この話は終わりっ!
ほら、ビッキーも景色見とけ!ワンダードリームランドなんて、滅多に来られるような場所じゃないんだから!」
ガチャンッ…
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