……………

なんの変哲もなかった木曜日。

各々で気楽に休日を過ごしていた矢先、サラの兄・ジョンが突然「結婚式にてフィアンセの身代わりをしてくれる人を探して欲しい」と相談にやってきた。

もちろんそんな事は無理だと初めはほぼ全員が反対をしたが、彼の真剣なお願いにより、6人はその依頼を受け入れる事にした。

いつからウチは「なんでも屋」になったのだろう。


とりあえず作戦ミーティングの場は、いつもお馴染みのメインルーム中央にあるテーブルだ。



ジム「よし。じゃぁ、まずはその花嫁の変装をしてくれる女性を探さなきゃな。
オイ、リッキー。お前の携帯のアドレスに入ってる女100人に片っ端から電話をかけるんだ」

リッキー「俺の携帯はいつから石田純一の電話と入れ替わったんですか?入ってませんよ、そんな」

ジム「そっか。俺の知り合いもそんなに女の人いないしな。
あ。意外とナイジェルのとかアドレス帳に、熟女大勢入ってたりするんじゃないのか?見せてみろ」

ナイジェル「いいけど、熟女ひとりしか入ってないぞ」

ジム「え?あ…本当だ。誰、この人?」

ナイジェル「お袋」

ジム「お母さん!?確かに熟女だけど…ちょっと熟しすぎだな」



その瞬間、何者かがジムの手からその携帯電話を取り上げて、ポイッと窓から外へ投げ捨てた。

ナイジェル「あ、俺の携帯…」



ビッキー「なーんでそんなわざわざ外部の人間から探そうとすんのよ?そんな方法より、もっと手っ取り早いやり方があるじゃん!」

ジム「は?何だよ、言ってみろ?」

ナイジェル「いや…だから、俺の携帯…」

「ったく、相変わらず鈍いわね!その代役、私がやるって言ってるのよ★」

「はぁ!?何言ってるんだ、お前!」

ナイジェル「いーから拾いに行け、お前ら!怒」



彼女はふんっ!と、鼻から大きく息を噴き出し、開いている窓を何事もなかったように閉めた。


「だって私、一度でいいからウエディングドレスって着てみたかったんだもん♪」

「『着てみたかったんだもん♪』って…気づかれるに決まってるだろ!?お前、ジョンさんのお父さんに一度会ってるんだし」


「あ…その心配はいりません。僕の知り合いにやり手のメイクがいますので。ばれないくらい上手く変装出来るはずです…」

天然そうに見えて意外と用意周到な兄貴に、ジムも思わず言葉が詰まった。


リッキー「それならビッキーでも問題ないんじゃないですか?ジョンさんもこう言ってますし」

サラ「多分、大丈夫よ。ウチのお父さんは息子と犬を見間違った事ある程抜けてる所あるから」

ナイジェル「それもそれで重症だな。病院連れてけ」


3人もビッキーが変装する作戦に賛同している様子だが…


「いや…やっぱりばれるって!大体、身長とか体型とか、声だって本人と違うわけじゃん?」

まだこのお節介男が残っていた。

ジムはビッキーの頭を軽く叩きながら言葉を続ける。


「やっぱりここは赤の他人で…」

「ドレス着てるんだから、わからないよそんなの!声だって…モゴモゴ話せばばれないと思うし!」

「いや。でも俺にはお前が人を騙せるような素晴らしい演技が出来るとは到底思えない」

「で〜き〜ま〜す〜!演技の『え』の字も知らないジャンルイスには言われたくありませんー!」

「腹立つ言い方だしッ…俺はジムだ」


またふたりのケンカが始まった。

こうなると、誰かが仲裁に入るまで言葉のぶつけ合いは止まらないが…


サラがそんな光景を見ながら、面白がるように頬を抑えて二ヤッと笑った。

「なぁにジム?随分しつこいわねぇ。もしかしてあれ?俺の可愛い彼女が別の男と結婚する姿を見るのは、嘘でも嫌って事なの?」

「は!?///いや、そういう意味じゃ…」

ボビー「ジム君。ゆでだこみたいだね。美味しそう」

「気色悪い事を言うな!」


しかしボビーの言う通り、彼の顔は確かに赤い。

それが図星って事なんて、この場のほとんどの人間がわかってたけど。

嘘をつくのが相変わらず下手だな。


そこでナイジェルが焦っているジムのポケットから携帯電話を抜き取り、意地悪そうに笑いながらボタンを押し始めた。


「そっかぁ。ジム君がダメって言うんなら仕方ないなぁ。じゃ、ローラちゃんを呼ぶか〜」

「もっとダメだぁ!つか、なに勝手に人の携帯取ってるんだ!返せ!」

「他に知り合いの女の人いないでしょ?…はーい、ボビー笑ってくださーい」

「リッキー、なに撮ってんだ!やめろ!」

「ローラさん、優しいから大丈夫よ。…あれ?これ待ち受けってどーするの?」

「勝手に設定するな、サラ!
…あっ!女はまだお前がいたじゃん!お前がやれよ!」



「……………。」









「話にならない。ボビー、この携帯折りなさい」


「フンンンッ!!!煤v

「あああ!マジで折る奴があるか!この馬鹿!」


5年間使い続けた愛用の携帯電話を真っ二つに破壊され、床までずーんと落ち込むジム。

そんな彼の背後に立ち、ナイジェルはタバコの端を咥え直した。


「はぁ…仕方ねーな。ならアイツしかいねぇな」

「誰?あ!やっと熟女を呼ぶ気になったか!?言っとくけど、お前のお母さんはダメだぞ?いくらなんでも熟成しすぎだからな。もっと若めの程良…」



こうしてジョンから依頼されたカムフラージュ結婚式に向けて、着々と準備が始まるのであった。


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