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……………


ガシャン!ガシャン!ガチャン!

扉の向こうから走り回る足音、物が壊れる激しい音、とにかく凄い音が漏れている。

中は清楚で清らかなハッピーウエディングが行われているはずなのに。


廊下でビッキーはサラの肩を叩いた。


「ねぇサラ、どうする〜?もう結婚式どころの騒ぎじゃないよ?ケーキ入刀時に乱入したボビー…ナイフを持ったジョンさんにマジ追いされてるんだけど」

「困ったわね。肝心の本物の花嫁はまだ来てないし」

「んなもんほっとけ。もともとこっちが無理言われてやらされてんだから」


悩んでいる女性陣に対し、ひとり残った男性のナイジェルは窓を開けるや否や、のんきに胸ポケットからいつものタバコを取り出した。


「でも、これじゃエミリーさんが可哀想だよ!なんとかしてあげられないかなぁ」

「なんとかしてーなら、お前が走って本物の花嫁連れてこい」

ビッキーにも背を向けたまま、彼はタバコに火をつける。


「んもうっ!相変わらず面倒臭がりなんだから!」

「ほっときなさい。それにしてもどうしましょうか」






ごごごごご…!






「…ん?」



灰色の煙が舞う先。

空を見上げていたナイジェルの目に、何か怪しいものが映った。


ひとつの小さな点。


それが少しずつだが、こちらへ向かって飛んで来ている。


「なんだアレ…。鳥か?」

目を擦ってみると、だんだんとその物体がハッキリ見えてきて…


鳥じゃない。


あれは…?


彼は半開きだった目を大きく見開いた。



「お前ら!なんか来てるッ!なんか物凄いの来てんぞッ!」

「はぁ?何?いきなり」


先程のだるそうな態度と一変、窓側に立っていたナイジェルが突然慌てて手招きをしてきたのだ。

その行動の理解が出来ず、首を傾げる女性ふたりの反応。


「だかっ…なんか!オカッ…オカメインコみてーなのがッ!!いーから来いって!」

「意味わかんない。インコが…なに?」



ガシャァァァアンッ!!!!



ようやく歩き出そうとした瞬間、轟音と突風が突然同時にサラとビッキーを襲った。



「「…ッ!!?」」


煙が渦巻き、何が起こったかわからない。

一瞬で廊下に煙が充満し、目の前が見えない。

わかったのは窓に背中を向けていたナイジェルの背後で、何かが激しく爆発したような光景が見えた事だけ。


「ケホッ!ケホッ!何、今の!?」

「ちょっと…ナイジェル!?大丈夫?」


うっすらと煙が薄くなり、サラとビッキーの目に映ったものは…






「イテテッ。また着地に失敗しちゃったぁ」









…オカメインコだ。







いや、でも普通のオカメインコではない。


顔は可愛らしいほっぺがピンクの黄色いオカメインコ。

体は人間の女性の体。


だけど、背中に翼が生えている。


そんなヘンテコな生き物が、うつ伏せに気絶しているナイジェルの上に乗っかっているのだ。




「だっ…誰?」

「あっ…!そうだ!ジョンさんは!?ジョンさんはどこっ!?ああっ!私が遅くなってしまったばっかりに!」

「あ…あのぅ…」


目の前には見た事もない生き物。

サラとビッキーは恐る恐るその鳥人間の近くへ歩み寄った。


「もしかして…エミリーさん…ですか?」

「えっ!?なんで私の名前を知ってるの?」



こんなにも外れてくれればいいと思った予想が…清々しく的中してしまった。


この人が……あぁ、違う。


この鳥が…エミリー。





彼女達のリアクション機能が、完全に一時停止してしまった。



「エミリーッ!!」

「ジョ…ジョンさん!」


翼の音を聞きつけて会場の両開きの扉を大きく開けたのは、彼女の帰りをずっと待ち続けていた新郎のジョン。

彼は持っていた血染めのナイフを床に投げ捨て、その場で彼女の元まで駆けてゆく。

廊下に敷いてある絨毯も、まるで神様が最初から用意をしていたかのような真っ赤な絨毯。


長い道を駆け抜け、

ついにジョンは愛する女性をこの手に抱き締める事が出来た。



「よかった!怪我はないか?」

「えぇ!途中でジェット機とぶつかりそうになったけど、今回は上手くかわしてやったわ!(その代わりビックリしてジェット機は墜落したけど)」

「そうか!なんとか間に合ってよかった…!」

「貴方と結ばれて…私にとって最高に幸せな結婚式よ!!」





ゴーン!


ゴーン!


ふたりの永遠の愛を祝福するかのように教会の鐘が鳴り、崩壊した窓から清々しい風が周りを包み込んでいた。










サラ「あの…感動してる所悪いんですけど、ウチの連れから降りてもらえますか?」


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