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……………


『何書いてんの?』


いつものカフェテラス。

あの日とおんなじように、木漏れ日のあたるお気に入りのこの席。

目の前の彼は、ヘラッと笑ってその紙を見せてきた。


「………ッ…///」



『見せて』

「…やだ」

『えぇ!いいじゃん、既に一回見てるんだから!』


「………。」



観念してエマがそのノートを見せると、美空は覗き込んだと同時に「ん?」と声を漏らす。

予想していたものとは全く違うものが目に映ったからだ。




『何これ?』

「皆の…ッ…似顔絵ッ…///
…早く…みん、な…の事……覚えようと…思って…」



確かにこれは、妙に丸顔に描かれたweather lifeの5人の顔だ。

多分このトゲトゲが日晴で、鼻が大きいのがクラウディ。

その隣の髪が長いのが僕か。

詩じゃなくて、絵を描く事もあるんだな。

だが詩のセンスとは対照的に、絵のセンスの方はというと…



『へただね』

「…ッ!そんな…ストレートに言…わなくてもッ…///」

『嘘だよ(笑)おまんじゅうみたいでカワイイ』



おまんじゅう…

結構真剣に描いたつもりだったのに、彼にはこれがおまんじゅうに見えたのか。

彼女が悲しそうに頭をかくんっと下げると、悪気がない美空は口を三角に開けたまま首を傾げた。



『どーしたの?』

「……なんでもっ………ッ?」



そこで彼女の視線は、ふと彼の手元に移った。

今日は珍しく美空もテーブルにノートを広げ、ペンを握っていたからだ。

いつもは携帯をいじっていたりゲームをやっていたから、その光景が不自然でずっと気になっていた。


「七音君は……なに…書いてるの?」

「あぁ?これ?」


『勉学』


「嘘だ」


『何故バレたし』


出された紙を見て、一瞬で嘘だと見破れた。

七音君は変わった色に髪も染めてるし、「学校キライ」といつも私に愚痴を書いてくる。

そんな彼が真面目に勉強をするはずがないと思ったからだ。



「なにっ…書いてたの…?」

「仕方ないなぁ。ほら?」


ようやくノートをこちらに向けてくれた。


「あっ…」


5本の横線の川を可愛らしいオタマジャクシが何匹も泳いでいる。

それが何列にも続いて、あらゆる所に散りばめられた音部記号も飾られている。


これは楽譜だ。


そしてそのタイトル部分には…




【七色の音】




『まだイメージでしか作ってないけどね』

彼は小さくメモを横に付け足していた。




凄い…

私が考えて書いた【詩】が【音楽】という全く別のものに進化していた。

初めての経験に心臓が高鳴って、思わず椅子から立ち上がりそうになってしまう。



『君が書いた詩に、こうやってリズムや音程が付いて、

僕の声で歌になって

仲間のギターやピアノやドラムで音楽になる。

これって、すげー興奮するライブじゃない?』



コクン。


エマは小さく首を縦に振った。

そんな彼女の顔を見て、美空は歯を見せて子どもみたいに笑う。

その口の動きは絶対「でしょ?」って言っているよね?



『じゃ、エマちゃんが作った詩。第一弾の音楽を完成させに行こうか?』

「うんっ…」



向かう先はこの人を含めた、

私の【詩】を【音楽】に変えてくれる

初めて出来た仲間達の元。



今まで序奏だった私の歌が


ここからやっと第一楽章に変わっていくんだ。



この歌が、この先どんな曲になっていくのか


凄く楽しみだよ。




ありがとう、




七音君。






fin


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