……………


「おわっ!肉だ肉ー!」


霜降りの真っ赤な牛肉を見て興奮しているのは、今のところほぼ何も手伝いをしていない美空だ。

日晴のお腹も「グゥッ」と鳴り、食事の瞬間を今か今かと待ちわびている。



「さて、では今から煮込み作業に取りかかる。まずは炒めておいたネギ、肉を土鍋に敷き、そしてタレを…」



家にあったレシピ本を参考に、分刻みで時間に厳しく雨宮がすき焼きを煮込んでいく。




「白菜がしんなりしてきたら…えぇ………ん?」



どこからかスッと手が伸びてきた。



パシッ!



すぐさま眼鏡を光らせて、その手を掴む。

女性のように白い手。




「奏…。何を入れようとしている?」

「あはは、アイスだよぉ。こんなに美味しい食べ物なんだから、鍋に入れても絶対美味しいってぇ〜」

彼の言う通り、その手にはデパートにて100円で買ったカップのバニラアイスが握られていた。


「すき焼きに合うわけないだろ。退けろ、邪魔だ」

「ちぇ〜。鍋は色々入れると美味しいって言うじゃん」

「何でも入れればいいというものではない」


日晴「あ、そうなんすか!?じゃぁ俺が買った松坂牛も入れときましょう!」

雨宮「いつの間にそんなもの買ったんだ!?お前、ずっとゲームセンターにいただろ?」

美空「あ!僕のポケットに入ってたカステラ入れようよ!斬新じゃね?」

雨宮「カステラ!?ポケットにカステラを入れるな!」


そこでスッとまた違う手が伸びてきて…


雨宮「クラウウディ、お前まで何を入れようとしてるんだ!濡れせんべいはすき焼きに入れる為に買ったんじゃない!」


雪之原「レシートいれとこぉ」

美空「あ!隠し味にミヤ君の眼鏡入れよっか!斬新じゃね???」

雨宮「お前らいい加減にしろ!!食べ物以外の物を入れるな!」


そんな光景を見て、会話はわからないがエマはクスクスと笑っていた。



そして十数分後、様々な邪魔者に翻弄されながら、ようやくメインのすき焼きが完成したようだ。

グツグツとよく煮え立った鍋から食欲をそそる良い香りがする。

それぞれのコップにお茶をそそぎ、そして…


「では!今回新しく僕達weather lifeの仲間になったエマちゃんの今後の活躍と健やかな成長を願って…カンパーイ!!」


「「カンパーイ!」」


リーダー美空の若干おかしい挨拶と同時に、楽しい歓迎パーティーは始まった。


「んー!!これ美味いっすよ!さすが雨宮さん!」

「当然だ。僕がレシピ通りに調理して失敗する事などまずありえない」

「あはは。うん、美味しいよぉ。また明日もやろぉ」



確かに美味しい。

こうやって生卵にお肉をつけて食べるスタイルなんて初めて。

この人達は私の知らない世界をたくさん知ってるんだな。


「熱ッ…」

エマがそんな事を考えながら大きめに切られた豆腐を口に入れると、予想以上の熱さに舌を火傷してしまった。



トントン、とそこで隣に座っていた男が彼女の肩を叩く。


『エマちゃん、美味しい??』


自分の食べる肉を大量に確保している七音君が、幸せそうに携帯を見せてきていた。


「…うんっ。美味しい…///」

「よかったぁ!はい、僕のお肉1枚あげる♪」


これで私は本当に七音君の仲間という存在になれた事を体で実感出来た。

自分が思ってるよりもっともっと美味しく感じられたのは


多分、今隣に君がいるからだよ。


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