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……………
リビングと同じくらい整理されたベッドルーム。
茶色のカーテンやアンティークの電気スタンドがシックな空気を醸し出し、
もっと年上の人が使用しているんじゃないかと思ってしまう程落ち着いた部屋だった。
「…あの人達…いいん、ですか…?」
毛布を持ち上げてシーツのシワを伸ばしていると、背中側から不安な声が聞こえた。
エマは恐らく、自分だけこちらに来てしまった事を申し訳なく思っているのだろう。
『大丈夫だ。アイツらは庭に出しても眠れる』
「……ッ…そう…ですか…」
「…………。」
雨宮はシーツを整え、毛布をかけ直しても、背中を見せたままなかなかエマの布団を出さない。
…どうすれば……いいのかな?
「あのっ…お布団…出し…たいんですけど……どこ…で…」
『君はここで寝ろ』
突然見せられた携帯電話の画面。
左手は今整えたばかりの自分のベッドを指差していた。
「…えっ…?……あま…みやさんは…?」
『僕は隣の部屋の椅子で眠る。心配するな。おかしな事はしない』
「……でも…」
『いいんだ』
彼の顔を見ると、いかにも断りにくい硬い表情。
でも「わかりました」とすぐに言えなくて、エマは黙って口を閉ざしてしまう。
「………。」
無音の部屋。
彼女の目を見た後、彼はもう一度携帯を打ち込み始めた。
『実は今、客人用の布団を丁度クリーニングに出しているんだ』
「えっ…」
『君をアイツらと同じようにバスタオルで寝かせるなんて、僕のプライドが許さない。
だからといって、一緒に寝るわけにもいかないだろう。
だから君だけここで寝てくれ。
そちらの方がこちらも気が楽だ』
長めの文章だったが、彼の本当の気持ちが読み取れた。
エマは数秒黙って、一度だけ小さく首を縦に振った。
彼の気持ちをここで断ってしまっては、逆に失礼だと思ったから。
「コホン」と咳払いをして、彼は再び携帯を打ち込む。
『一応念を押したから恐らく何も起こらないと思うが、何かあったらすぐに大声を出せ。いいな?』
「はいっ…」
『特に七音には気をつけろ』
その文にはクスッと笑ってしまったが、特にウケを狙ったわけではない雨宮の頭には「?」が浮かんだ。
「まぁいい。もう10時から10分も過ぎているな。早く寝なければ…」
「雨宮さんって……凄く…優しい……」
「……ッ…///?」
エマの口から出てきたたどたどしい言葉に、ピクンと彼は反応した。
優しい…?
「厳しい」や「生真面目」などは聞き飽きる程散々言われてきたが、
「優しい」は、正直聞き慣れない台詞。
しかし彼女はハッキリとこちらを見て、その言葉を自分に言っていた。
「…私の事は…気に…しないで…休んで…ください。
……なにか…あったら…大きい声……出します」
「…あぁ、そうしてくれ」
眼鏡を親指で持ち上げ、光の反射で瞳が見えなくなったが、
照れているのか若干顔は俯き気味になっていた。
もうひとつ意味のない小さな咳払いをして、最後にまた携帯のボタンを打つ。
『優しいのではなく人として当然の事をしているまでです。おやすみなさい』
「……おやすみなさい」
彼は軽く頭を下げて部屋を出た。
今の「優しい」は、思った感情が自然と口から出てきた言葉だった。
多分彼は来客用の布団があったとしても、私をここに寝せてくれたと思う。
真面目すぎるから周りから誤解されやすいのかな。
エマは部屋の電気を消し、安心して彼が整えてくれた柔らかいベッドに入った。
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