10


……………


朝食は真っ白なご飯と温かいお味噌汁。

鮭の塩焼き、納豆、漬け物。


純和風のメニューで、エマにとっては初めて食べる物も多かった。

それにしても、昨晩すき焼きをあれほどたくさん食べたのに、彼らは朝食もおかわりしちゃう程食べている。

男の人って凄いな…。



『エマ。食べられるか?』


食べ慣れていない食材ばかりで戸惑っていると思った雨宮の質問。

それには首を縦に振って彼女は答えた。


「…美味しい」

「そうか。よかった」

















こうして騒がしかった歓迎会もようやく幕を下ろしました。

お泊まり会、すき焼き、何よりこんなに男の人達に囲まれて過ごした事。

初めての出来事が多くて、知らない事とか、わからない事もたくさんあったけど

とても楽しい一日でした。



雨宮君の部屋を出て各自自分の家に帰る事になり、七音君は彼の部屋の上の階に住んでいるらしいのですが

わざわざ私の為に、駅まで見送りに来てくれました。








『エマちゃん、楽しかった?』


電車を待っている途中、彼がメモ帳に書いて見せてきたので、もちろん答えは…


「うんっ…。楽し…かった。……凄く」

『よかった!ミヤ君、時間に厳しいから面倒だったでしょ?』

「…そんな事…ないよ。…あの人…らしいと思う」

『そう?僕は面倒で×2仕方ないよ!どうにかならんのかね、あの性格』



その割には、ほぼ毎日雨宮君の部屋に行ってるらしいよね。

雪之原君から教えてもらったよ。



『それより、寝る時大丈夫だった?』

「大丈夫っ…だよ。本当に……何もされて…ないし…」

『そうじゃなくてさ!
僕、先週ミヤ君の部屋の布団に思いっきりコーンポタージュぶちまけたんだよね(笑)

コーン臭くなかった??』



クリーニング…。

あぁ…そういう事か。




「臭かった(笑)」

『え!?マジで!?やっぱかぁ!やっぱり水洗いしても落ちなかったんだなぁ。

ミヤ君に正直に話さないと、ばれたら怒るよね?』



もうばれてるよ、七音君。





ピピーッ!





鳴る音は聞こえなかったが上部に設置されているランプが光り、自分が乗る電車がやってきた事がわかった。

ゆっくりと停車し、扉が開く。



『バイバイ!気をつけてね』


彼女が電車に乗り込んで振り返ると、美空が笑ってそう書いた紙を見せてきていた。


「ありがとうっ……。またね」


お互い手を振り合って、扉が閉まる。

数秒後、電車は隣町に向かって動き出して、エマは転ばないように右手で手すりを掴んだ。





ガタンッ!ガタンッ!



彼の姿がみるみるうちに小さくなり、そして見えなくなる。



いつもの帰り道。

いつもの窓の景色。



昨日の出来事をビデオテープを巻き戻すように思い出して、なんとなく寂しくなった。


あんなに楽しかった日は生まれて初めてだったから。

七音君と一日中、ずっと一緒にいられた。

それだけで凄く幸せで胸がいっぱいで、

同時にその瞬間がもう終わっちゃったんだなって考えたら…


ギュッと手すりを掴んでいる手に力を込め、目を瞑った。





ブーッ!ブーッ!




「…?」


あ…携帯のバイブだ。

なんだろう。




From:七音君

本文
――――――――――――――
また歓迎会しようね(^O^)/
――――――――――――――



歓迎会は…もうしなくていいよ(笑)



携帯の画面を見てひとり小さく笑ったエマは、すっかり見えなくなってしまった駅の方向を


ずっと見つめ続けていた。




fin


- 431 -

*PREV  NEXT#


ページ: