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「ナイジェル…あれは何?」
「あ?」
休日の中年サラリーマンのようにソファーでだらしなく寝ている男に黒い影が落ちた。
「あれってなんだ?」
「あれよ…」
サラが指差した方向は、メインルームの中央に設置してある四角型のテーブル。
そこには目を疑うような惨劇が広がっていた。
食べた後のポテトチップスが散乱。
その袋が散乱。
カレーを食べ終えた汚い皿、お茶はこぼれたまま放置。
ポテトチップスの欠片に蟻の行列。
脱いだ靴下がそのまま散乱。
脱いだ靴下には…蟻は見向きもしない。
「あぁ…あれか?ジムの野郎が」
ガシッ!
それと同時に襟を片手で持ち上げられ、横向きに寝ていた男の体が垂直に。
「…おぐっ…!…ごめんなさッ…」
その状態で手を離され、ドサッと大きな体はソファーに叩きつけられた。
「イッテェ。お前ホントに女かよ…」
「こんな休日の地獄絵図を作り出せるの、アンタ以外他にいないでしょ。反省したならきちんと片付けなさい」
「えぇ…面倒だなぁ…」
「えぇじゃないの。早く」
「…わかった」
「ちょっと?なに電話してんのよ?」
「掃除機を呼ぶ」
「なんでもいいから綺麗にしときなさいよ」
「あ…ジム?俺だけど…」
「自分で綺麗にしなさい(怒)」
この髭ヅラのタバコ男。
一見、落ち着いた雰囲気漂う良い男だが、中身は超がつく程のだらしないダメオッサン。
休みの日はいつもこんな感じ。
普段も何を考えてるかわかる者はいない。
喋り方も聞き取りづらいし、むしろ聞いてるこっちまでだるくなってくる。
チームの中で最年長だというのに全くやる気がなくて、でもそれさえも当の本人は気にしていない。
追求に追求を極めた「我が道をゆく男」
だが、彼にはひとつ不思議な事がある。
こんなダメな人間なのに、周りに自然と人が集まってくるのだ。
こんなダメな人間なのに、何故か嫌う人がいない不思議な人。
ナイジェルという男は昔からそういう人間であり、周りも自然とそれを受け入れていた。
変な男(ひと)。
私は面倒臭そうに立ち上がる彼を見て、ため息混じりにその場を去った。
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