「はぁ…」


深く大きなため息。

再び薄暗い廊下を進むが自室に戻る様子はなく、扉は素通りした。

目を俯け何か思いつめた顔で、彼女はある場所へと向かう。


だんだんと耳に入ってくる、静かな夜には似合わない激しい音。

体に振動が伝わるが、それに動じる事なく前に進み続け、そして



ピピッ




【解除されました】




持っているIDカードを機械にかざし、流れたアナウンス音。


 

ギギギギギ…




大きく分厚い自動ドアが、左右に分かれて動いた。





その瞬間







ブオオオオオオオンッ!!!




扉が開けた瞬間、小さく聞こえていたそのエンジン音が耳を塞ぎたくなる程の威力で鼓膜を刺激した。




「ッ…?」



彼女がやってきたのは、バイクの練習スタンド。

こんな時間誰もいないはずのその場所は、ライトが点灯されて明るかった。

その広いスペースをひとりで独占していた男は、突然開かれた2階の扉を見上げて、バイクのスピードを落とした。



「サラ…?」

「リッキー、今日も頑張ってるのね。偉い偉い」



リッキーはゴーグルを持ち上げ、宙を舞う砂を払いながらサラの姿を確認する。

彼女はそのまま階段を使って下へ降りてきて、リッキーもとりあえずヘルメットを外した。


「知ってたんですね」

「コソコソこんな時間まで練習して。明日起きれないわよ」

「…………。」


時計は深夜12時半を回っていた。

リッキーは夜のこの時間、誰にも見つからないようにバイクの特訓をする日が週に何日かあった。

ジム達が連絡を取っても返事がない理由はここにある。



「いつから知ってたんですか?」

「大分前から知ってたわよ」

「もうとっくに眠ってると思ってました」

「大人はこのくらいの時間まで起きてるもんなの」


誰かさんからの受け売りの台詞を使い、ビックリしている彼に軽く微笑んだ。



「もう終わる?」

「あ、はい。そろそろ切り上げようと思っていた所です。何かありましたか?」

「ううん、なんでもない。眠れなくてなんとなく話相手が欲しかっただけ」

「………ッ…」



なんだか今日の彼女、少しだけだけど元気がないように見える。


何かあったのかな?


根拠もないただの直感だが、そう思った。




「片付けてきます。ここで少し待っててください」


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