……………


翌日。


本日は週に2回行われる、モトクロスバイクレース開催日だ。

会場はたくさんの客で埋め尽くされ、熱気も大いに高まっている。



「おはよーう♪」

「おはよ」


レース前だからライダー達は皆ピリピリしていると思われがちだが、案外そうでもない。

いつも通り挨拶を交わし、時には冗談を言い合ったりと、空気は案外和やかなのだ。


「…ふぁ」

「よ!おはよ、リッキー。ん?なんか眠そうだな?」


小さくあくびをしたリッキーの元へやってきたのは、青のライダースーツを着たリーダーのジムだ。

彼はいつもレース前、仲間のコンディションを確認する為に、こうやってひとりひとりの顔を窺いに来るのが習慣になっている。


「そんな事ないですよ」

「そんな子犬みたいに目を擦りながら言ったって説得力ないぞ。あ、もしかして昨日の『用事』ってやつが原因か?」

「もういいでしょ、その話は(笑)」

「ま、いいけど。事故らないように気をつけろよ」

「はい」


そこで丁度ジムの後ろを、ある人物が横切る姿が目に入った。

昨日話を聞いてもらったサラだ。

やっぱり、きちんとお礼を言っておいた方がいいかな。

ジムとの会話を終え、リッキーは時計を見上げている彼女の元へ駆け寄った。



「サラ!」

「…ッ」


試合前で神経を集中させていたのか、返事をする事も忘れて彼女は青い瞳をこちらに向けた。


「昨日はどうもありがとうございました」

「あぁ…いいのよ全然。それに元はと言えば、私が無理やり押しかけただけだし」

「いえ、話を聞いてもらえただけでも凄く楽になりました。ありがとうございます」


無邪気に笑ったリッキーに、サラもピンクの口元が緩む。


ビシッ!


「痛っ!」


突然鼻を指でピンと弾かれて手で抑えた。


「何するんですか(涙)」

「眠いでしょ?」

「えっ…いや…」

「目がトロンとしてるわよ。しっかりしなさい。さ、行くわよ」



控え室にレース10分前の放送がかかり、6人はたくさんの客が待つスタンド場へそれぞれ歩き出した。


これから何が起こるかなんて


この時はまだ誰も知らない。


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