……………


サラは生きていた。


カーブを曲がりきれず、衝撃で体がコースから投げ出されてしまったが、巻き添えになったナイジェルがクッションとなって打撲程度の軽傷で済んだ。


しかし、下敷きになった彼はその倍の衝撃を受けて重傷。意識不明。


吐血も多く、見る限り体へのダメージが大きく見えた。


もちろんレースも中止。


ふたりはその後、待機していた医療班により病院へ緊急搬送され、


ナイジェルはすぐに集中治療室に入れられた。



その扉の前にいると暗い気持ちになるとジムが言い出し、4人はサラの寝ている一般病室までやってきていた。








「ごめんなさい…」


仲間に対する彼女の一言目は、らしくない弱々しいこの言葉だった。


「まぁ、今はどう悔やんだって仕方がない。それよりお前の体は大丈夫か?」

「私は大丈夫。ナイジェルがいてくれたから…」


再び俯いてしまう。

彼女の顔や腕にも、たくさんの絆創膏や包帯が巻いてある。


自分の体もきっと激痛が走っているのに、今はそれどころじゃないのだろう。



「ナイジェルは?」

「今、集中治療室に入ってる。きっと大丈夫さ」


言葉では「うん」と返しても、ジムを見上げる彼女の目は

「死なないよね」と訊いている。



今現在でもナイジェルの容態はわからない。

「死なない」とは、はっきりと言い切れないから

もちろんジムだって、ビッキーもボビーもリッキーも、


本当は不安で仕方がない。



暗い空気の中、なんとか話を繋げようとジムは口を開く。



「それにしても…あれだな。お前がミスるなんて珍しいよな。まぁ…人間誰にだってある事だ」

「…うん」




ヤバい…。

もう会話が終わってしまった。


「びょ…病院なんて久しぶり来たなぁ。綺麗じゃないか。景色もいいし」

「そうね…」




ダメだ…


どの話題に触れていいのかわからない。


「あっ。欲しい物とかあったら、近くのコンビニで買ってきてやるから言えよ!」

「ありがとう」




コンコン





そこで数回、部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「あっ…はい」

「ナイジェルさんのお連れの方ですか?」


姿を見せたのはひとりのナースだ。




まさかっ…



「終わったんですか!?」

「はい…。先生からお話がありますので、こちらにいらしてください」


「「……ッ」」



緊張が走る。


ジムはゴクリと息を飲んだ。



「わかりました」



サラは病室を出るわけにはいかないので、彼女を除いた4人だけがナースに連れられる。



「サラ。また後でな」

「………。」



ひとりになった…静かな個室。


窓から入る光に照らされるも、サラは震えてベッドに塞ぎ込んでしまった。


- 439 -

*PREV  NEXT#


ページ: