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……………
「よし。今日のレース内容のおさらいをするぞー!集まれー!」
ジムのかけ声で全員が控え室、ホワイトボードの前に集まった。
いつもレース前には、今日はどのコースを走るのか、事故を起こさない為の注意点等を改めておさらいするとして、リーダーの彼が毎回説明を行う。
これが終わった後、全員がライダースーツに着替え、そして観客が待つスタンドへ向かうのが日課となっている。
「今日のコースはこの第8コース!このコースは非常に曲がりカーブや障害が少なく走りやすいコースだ。
ジャンプも少ないから、調子に乗って飛ばしすぎないよう気をつけろ」
この第8コースは、私が事故を起こす前のナイジェルが最も得意としていたコース。
細かなテクニックが不要の為、ターボ能力が最も長けている彼の十八番のコース。
ここでナイジェルが負けた所はほとんど見た事がなかった。
その代わり、操作を重視した私にとっては最も苦手なコースなのだが…。
…意識してるにしても無意識にしても、ずっと手を抜いてナイジェルの後ろを走っている――…
「……ッ…」
「ん?どうした、サラ?」
「あぁ…何でもない」
突然顔色を変えた彼女に気づき、ジムが声をかけた。
先日リッキーから言われた事が、突然頭の中によぎってきていた。
私はナイジェルの事が心配で、彼の後ろを走っていた事は紛れもない事実だ。
しかしそんな行動、周りで真剣に戦っている仲間にも失礼だし、何よりスポーツマンとして競技に私情を持ち込むなんて言語道断。
今日は…真面目に走らなければならない。
左斜め前に座っているナイジェルの背中を、意味もなくただ見つめた。
「はい、じゃぁおさらい終了!ライダースーツに着替えて20分後、またここに集合な!」
気がついたらジムの説明はいつの間にか終わっていた。
正直、全く聞いていない。
椅子から立ち上がり、歩き出すビッキーやボビー。そしてナイジェル。
さっき反省したばかりなのに、緊張感が足りてないな…私。
小さく息を吐き、女性用更衣室へ足を運んだ。
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