34
………………
身にまとう、着慣れたライダースーツ。
目の覚めるような…とまではいかないが、若干落ち着いた暗さを持つ黄色。
ウィンディランに所属すると、まずはライダーひとりひとりのイメージカラーを社長から決められる。
理由は、走っている時は「人」より「色」の方が見ている側が判断しやすいから。
確かに全員が同じ色のスーツで走ったりなんかしたら、ヘルメットで顔も隠れているわけだし、トップが誰でビリが誰かさえわからない。
私のイメージカラーが黄色の理由は、つい最近初めて社長から教えてもらった。
『金髪だから』
たったそれだけだったとは…
あんなに拍子抜けしたのは久しぶりだった。
ちなみにビッキーはピンクがなかったので、自らオレンジを希望。
リッキーは若さと、どことなく可愛らしい雰囲気を持ち合わせている事から赤。
ボビーは最初から着ていた緑の全身タイツから、ナイジェルはけだるく欲求不満っぽいから紫←
ジムの青に至っては「覚えてない」の一言だった。
今ではこの色が板について、それぞれに色のイメージがあるのが当たり前。
…だから私は自然と「紫」の色を目で追ってしまう。
今だって。
意識していないのに、目はその色を追っていた。
「どうかした?」
「えっ…」
視線に気づいて、彼はサラに近づいてきた。
あと5分もすればゲートが開いて、観客の広がるスタンドへ歩き出さなければならない。
「顔赤いよ。具合悪い?」
「……ッ…///」
キスを交わしたその日から、私は貴方の顔を見ると筋肉が硬直してしまう。
先日あんな事をしたのに、貴方は平然と私の目を見て何事もなかったかのように話しかけてくる。
そんな図太く脳天気な所は、前のナイジェルとちっとも変わってない。
私が…どれだけ悩んでいるとも知らないで…
「大丈夫。なんでもない」
「そう?無理しないで」
でも…丁寧な言葉遣いとか優しい笑顔は、前のナイジェルではない。
暗いトンネルの中、それを改めて感じた。
「サラ、ナイジェル!1分前だぞ!」
「あ、はい」
ジムから呼ばれ、ふたりは元の位置についた。
・
・
・
「「キャァァァァァ!!」」
ゲートが開くと様々な歓声がスタンドに広がる。
怪我から復帰した事もあってか、最近はナイジェルを応援する人々が前より増えた気がする。
彼のイメージカラーの紫色のタオルを持つ人やTシャツを着ている人が目立つから、そう思うようになったのか。
そういえば最近は若い世代からの人気も伸びてきた。
予想が的中したよう。
前の乱暴な親父キャラと違って、紳士的なダンディキャラがウケているらしい。
「サラ?大丈夫?」
「…え?」
ビッキーからこっそり話しかけられて気がついたが、眉間にシワが寄っていたようだ。
嬉しい事ではあるが、それを心の底から喜べていない自分もいる。
それが無意識に顔に出てしまった。
『さて、6人全員がスタートラインにつきました!本日はどのようなレースを我々に見せてくれるのでしょうか!?』
いけない。
レースに集中しなければ。
あれだけ自分に言い聞かせたはずじゃない。
スタートラインに立って軽く自分の頬を叩き、ヘルメットを被る。
ブオオオオオッ…!
響かせるバイクのエンジン音。
集中しなければ。
集中しなければ…
「………ッ…」
最後に軽く周りを見ると、リッキーと目が合った。
ヘルメットを被っているので表情はわからず、すぐに前を向く。
3
2
1
GO!!
ブオオオオオッ!!!
6台のバイクは同時にスタートラインを飛び出した!
- 465 -
*PREV NEXT#
ページ: