……………

「はい」


…ッ…女の人だ…。大丈夫…

チケットを受け取って点線をちぎりスタンプを押して、お客さんに返す。



エマはチケットの受付係に奮闘していた。

並んでいるのはたくさんのお客さん。

weather lifeのファンは比較的女性が多い為か、今の所男性は来ていない。

女の人なら普通に対応が出来るし、このまますんなりいけばいいのだが。







あっ…また女の人だ。

よかった。

チケットをちぎって、スタンプを押して…




「はい、お嬢さん、よろしく」

「……ッ…!煤v



わっ!男の人っ…


ドクンッ…ドクンッ…



初めての男の客。

恐怖でグッと目を瞑り、震える手でチケットをちぎる。

一度スタンプをテーブルに落としてしまったが、慌てて拾い処理をする。


「ありがとう」


…終わった。

よかっ……


…ッ!また男の人!


しかも少し怖そう…ッ…

再び目を瞑ったまま震える手で受け取り、チケットをちぎ…


「あっ!ちょ、オネーちゃん!中の写真まで破れてるじゃん!記念に取っておこうと思ったのにどーしてくれんの!?」


「……ッ…!?」



えっ…?

な…何か言ってるっ!

しかも顔が怒ってる…?


「せっかくの貴重なチケットなのにー。
ねぇ、代わりの新しいチケット頂戴よ!いっぱいあるでしょ?」

「…ッ…」

「ねぇ!?聞いてんの!?」

「え…その…」



震える手。


怖いっ…


なんて言ってるの…?


慌ててもうひとりの受付の女性に助けを求めようとするが


「一列に並んでくださーい!ほら、そこの男の子!横入りは禁止!」



なんだか忙しそうでこちらの異変に気づいていないっ…



「なにこの人?聞こえないの!?ちょっと!他の人呼んでよ!」


わからない…わからないよっ…

人が詰まってお客さん達が混乱しだしてる。

耳が聞こえなくても、ざわついている状況が視覚でわかる。



どうしようッ…!


どうしようッ…!!


どうしようッ…!!


誰か、助けて!














「はい。これで満足でしょうか?」


「えっ…」


責めていた受付の女の子の隣に立った男。

その人が突然、真新しいチケットを差し出してきた。



「…………。」


固まる柄の悪い男。


「これだけじゃ足りないですか。それなら…」


持っていたペンでサインまで付け足す。


あれだけ騒がしかった受付が一瞬で静まって…





「キャァァァァッ!!雨宮君よ!雨宮君が受付に立ってるわぁっ!」


ひとりの女性の叫び声を筆頭にファンが一気に押し寄せ、警備のおじさんがその波に押し潰された。


「うああぁっ!マジっすか!?これ、俺が貰っていいんすか!?」

「はい。この度はスタッフが迷惑をおかけし、大変申し訳ございません」


不良男は雨宮からチケットを受け取り、飛び跳ねて喜んだ。


「あまッ…みや…く…」

『至急僕の知り合いの応援を呼んだ。
それまではここは僕が担当するから君は部屋に戻っていい』


あらかじめ打ち込まれていた携帯の文字を読みあげ顔を上げる。


「でも…打ち合わせ…って…言って…」

「それはもう問題ない。早く戻れ」


背中を押され、エマは奥の部屋へ出された。


その後も続く騒ぎ声や激しい物音。


もちろん、その音は私には聞こえないけど。



ごめんなさい…


雨宮君…


- 474 -

*PREV  NEXT#


ページ: